ジェイムズ・ヒーピー英国防担当閣外相は7日、中国軍に所属する延べ31人が2016年から2020年まで、英国内の士官学校などに留学し訓練を受けていたことを明らかにした。また、英国軍は2014年以降、中国で人民解放軍に9回の訓練を施したという。ヒーピー氏は訓練には機密情報は含まれていないとしている。
英シンクタンク・シビタス(Civitas)で防衛・安全保障部門のディレクターを務めるロバート・クラーク氏は、訓練は公安法に抵触しないものの「英国や同盟国の安全保障とは相いれない」と指摘する。
米国の中国専門家でエポックタイムズの寄稿者リック・フィッシャー氏は、西側軍人を採用することは「最も純粋なスパイ形態の一つ」と指摘した。
公式の訓練
「過去5年間、中国軍関係者が英国での訓練に参加したことがあるか」との保守党のトバイアス・エルウッド下院国防特別委員会委員長の質問に対し、ヒーピー氏は2016年から2020年まで、延べ31人が防衛アカデミー、RAFクランウェル、王立陸軍士官学校サンドハーストなど英国軍の施設で計15のコースに参加したことを明らかにした。
また過去10年間に英国が中国で行った訓練についての別の質問に対して、言語、医療訓練、山岳救助サービスのほか、香港警察へのフットドリル指導などの分野を含む9つの訓練セッションに加わったと述べた。
ヒーピー氏は、これらのセッションに機密情報はなく、2020年以降は両国間の訓練は行われていないとしている。
しかし、エルウッド氏はこうした中国との関係性にも「脅威が潜んでいる」と、英紙タイムズに語った。
「もちろん中国側は機密情報にアクセスできないだろうが、問題はそこではない。彼らが作るコネや英国のプロトコル、教義を理解し、将来的に他の人を採用する可能性があることが問題だ」と述べた。
国防省は2020年8月、毎年行っている香港警察への訓練を新型コロナウイルス感染症の流行を理由に中止している。広報担当者は当時、エポックタイムズに対し「制限が解除されたら再検討する」と述べていた。
退役した英国軍パイロット
前述した元パイロットらによる中国軍の訓練には約30人が関与していた。BBCによると、台湾などをめぐる紛争時に備え、西側の軍用機やパイロットの運用方法を理解するための手助けをしていたという。約23万8000ポンド(約4000万円)が提示されたケースもあった。
こうした中国軍の訓練に関わった元パイロットについて、ヒーピー氏は7日「公務機密法に違反した証拠はない」と主張。もし何らかの証拠が出てくれば、国防省は躊躇なく刑事告発すると強調した。また、国防省は「すでに関与している個人だけでなく、将来の採用を阻止するための措置を積極的にとっている」と述べた。
ヒーピー氏によれば、新しい国家安全保障法案は「関連する活動を幅広くとらえ」、「より広く変化する脅威」に対処することが期待されるとした。
一方でクラーク氏はエポックタイムズに、中国軍人の訓練はまだ「国家安全保障を損なう可能性を大いに残す」と懸念を示した。
「少なくとも、中国を軍事的に支援することは、昨年の統合レビューの結果を著しく損なう。ましてや、英国政府によって間もなく再調整されるであろう中国に対する安全保障の基調に沿うものでもない」と述べた。「このようなケースは、英国の国家安全保障や同盟国の安全保障と相容れない」
2021年3月に当時のジョンソン政権が発表した「安全保障・防衛・開発・外交政策の統合レビュー」では、中国共産党を「体系的な競争相手」とした。スナク政権のタジェンダット安全保障相は1日、中国が英国にとって「長期の戦略的脅威」だと発言している。
「スパイ活動の形態の1つ」
米拠点のシンクタンク・国際評価戦略センターのシニアフェローであるフィッシャー氏は、訓練のために「中国が英米軍人を『採用』することは、中国の軍事増強を促すと同時に、最も純粋なスパイ行為の1つ」であると述べた。
また、エポックタイムズへの電子メールで、中国で有利な訓練の仕事を引き受けた英米軍のパイロットは、「傭兵よりも悪い」と指摘。「中国のパイロットなどに与えている技術は、中国が台湾に侵攻した際に台湾人、米国人、日本人を殺すのに役立つのだから、彼らは裏切り者だ」と述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。