遺伝子解析最大手の華大集団(BGI)は、米国人のDNAを採取し世界最大のバイオデータベースを構築しているー。国防総省サイバーセキュリティ政策のジョン・ミルズ元局長によれば、同社は今や米国人の「デジタル・レプリカ」を作る能力を有すると指摘した。
新唐人テレビに出演したミルズ氏は「彼らは私たち一人ひとりの複雑な構造を複製する能力を持っている。つまり米国人の『クローン人間』の作成が可能なのだ」と語った。
DNA採集は「軍民融合」の一環
新型コロナウイルス関連事業で急成長したBGIをめぐっては、これまでも安全保障上の懸念が取り沙汰されてきた。ロイター通信は昨年、BGIグループが中国軍と共同開発した出生前検査のデータを二次利用していると報じた。米商務省は20年、新疆ウイグル自治区のウイグル人への人権侵害に関わったとし、BGIの関連会社を米国の取引制限リスト「エンティティー・リスト」に加えている。
いっぽう、遺伝子ビジネスの国際展開を狙うBGIの創設者兼代表・汪建氏は2017年の深セン起業家大会で、遺伝子改革と遺伝子合成を経て、複数のウイルスや細菌を大量生産できる産業レベルの技術力を同社は備えていると発表。2027年までには「あらゆる生命を化学的に合成する」技術を確立すると述べていた。
こうした背景を踏まえてミルズ氏は「BGIは何の制約も損失もなく、あらゆる悪事を働くことができる」「入手した米国人のデータを使って、特定の非漢民族をターゲットにした追従型ウイルスを生産することも可能だ」と危機感をあらわにした。
また、同氏は中国共産党が推し進める「軍民融合」政策に言及し、実質上党の支配下にある中国の民間企業は「国家安全保障、国家情報機関の延長線上にある」と指摘した。
軍民融合とは、中国の軍事的近代化を強化するために民間で開発された研究・技術を活用しようとする国家主導の戦略を指す。米国務省は2020年の報告書で、中国共産党は最も技術的に進んだ軍事組織を構築し、地域的・世界的な野心を達成する上で、軍民融合が不可欠な戦略だと見なしていると警戒感を示した。
2021年には、トム・コットン上院議員とマイク・ギャラガー下院議員がBGIは中国の軍民融合戦略の一部だとして、同社を政府のブラックリストに追加するようイエレン米国財務長官らに書簡を送っている。
「彼らは(中国当局の)目であり耳であり収集家でもある」。ミルズ氏は、これらの企業に情報を提供をすれば、実質的に中国の情報機関に流れることになると強調した。
「彼らは米国人一人ひとりのことを熟知している。私のファイルも中国にあるだろう」
BGI、米国人研究者を標的に
ミルズ氏は、海外の優秀な研究者を厚遇で招く中国共産党中央組織部主管の人材招聘計画「千人計画」を通じて、BGIグループが米国の著名な研究者をターゲットにしてきたことにも触れた。「彼らは、米国の優秀な研究者をターゲットにしてきた長い歴史がある。これらは即座に中国との国家安全保障の問題に発展しかねないものだ」
「千人計画」をめぐっては、技術盗用や情報漏れにつながるとして、米政府も目を光らせてきた。昨年には、同計画をめぐり虚偽申告をしたハーバード大学のチャールズ・リーバー教授を起訴している。
「中国は金で教授や学者を集めてきた。つまり、彼らは米国の知的財産を狙う非常に積極的なプログラムを通して、米国の著名な研究者を取り込もうとしている」とミルズ氏は言う。
また、米司法省がスパイ活動など国家安全保障における中国共産党の脅威に対処する取り組み「チャイナ・イニシアチブ」を取りやめたことについて、「愚か」な決断だったと指摘した。
DNAを世界征服の手段に
ミルズ氏は、国家安全保障上のリスクを理由に、BGIグループなどの中国企業をブラックリストに追加し、米国での活動を禁止するよう政府に求めている。国民に対してDNA検査を控えるよう呼びかけた。
「生物兵器と同じだから、彼らを受け入れるのは賢明ではない」「DNA検査で得られたデータは生物兵器にとって重要な情報であり、脅威と見なす必要がある」
米国家防諜安全保障センター(NCSC)も同年、量子コンピュータなどの先端技術分野で主導権をにぎるため、中国企業が世界中から遺伝子データを収集していると警告する報告書を発表している。
(翻訳編集・山中蓮夏)
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