米国腎臓データシステム（USRDS）の最新統計によると、2019年の透析の普及率は、台湾が世界一、米国が3位となっています。[1] 腎臓の主な働きは体の解毒ですが、特定の病気や食べ物からの毒素の摂り過ぎによって腎臓が傷つき、腎機能の低下や毒素の蓄積が起こり、最終的には透析に至ります。しかし、腎臓の機能を維持し、高齢になっても腎臓を維持する方法があります。
 

排尿はデトックス! 腎臓は多くの毒素を除去する

毎日トイレに行くのは、実は腎臓がデトックスしているのです。

腎臓は体内の解毒作用を担う重要な臓器で、その基本単位はネフロンであり、1つの腎臓は約100万個のネフロンから構成されています。また、腎臓は糸球体と尿細管という2つの部分に分かれています。

腎機能が正常な人の場合、血液は糸球体に入り、ろ過された後、腎尿細管に入り再吸収（水分やブドウ糖などの必要成分の回収）と分泌（不要な物質を血管から腎尿細管へ分泌）を行っています。そして残りの液体は尿として排泄されます。

台湾の林口長庚病院毒物科主任の顔宗海氏によると、尿の形成は、尿酸、尿毒、クレアチニンなどの代謝後の体内の有毒な老廃物を除去する複雑なプロセスであるといいます。

また腎臓は、過剰なミネラル、水溶性農薬、食品添加物、薬物、アルコール、化学毒、一部の重金属などの排泄も担っています。 [2][3]

人が1日に出す尿の総量は、普通に水を飲んでいれば1〜2リットル程度です。「この尿が排泄されないと、有害物質が取り除けないのです」と顔宗海氏は言います。
 

腎臓の機能を低下させ、腎臓の解毒作用に影響を与える7つの要因

病気やケガで腎臓が十分に機能しなくなると、血液中に老廃物や毒素、余分な水分が溜まって腎臓の機能が低下し、透析に至ります。

1.糖尿病

世界的に、糖尿病は末期腎不全の主要原因であり、血糖値を適切にコントロールしないと、糖尿病性腎症になり、最終的には透析に至ることもあります。 [4]

「台湾の透析人口の半分以上が糖尿病患者であり、私が診察した（透析患者の）半分以上が糖尿病でした」と顔宗海氏は語ります。

2.高血圧

腎臓の小・中サイズの血管が損傷すると、傷ついた血管は血液中の毒素をろ過することができなくなります。

3.腎臓疾患

慢性腎炎（結石性）、腎臓結石、多発性嚢胞腎など、結石を除去しないと、時間が経つと腎臓水腫になることがあります。多発性嚢胞腎は遺伝性の疾患で、60歳を過ぎると半数以上が人工透析に直面するそうです。

4.痛風

血液中の尿酸のほとんどは腎臓から排泄されますが、尿酸値が上昇すると、尿酸の結晶が関節腔に沈着し、炎症が起こり痛風となります。そして尿酸の結晶が腎臓に沈着すると、腎臓にダメージを与える可能性があります。

5.薬物乱用

腎毒性のある鎮痛剤を服用すると、腎臓にダメージを与えることがあります。

一般的に使用されている医薬品であるプリロセックの主成分はアセトアミノフェンであり、過剰に摂取すると肝毒性を有し、肝機能に影響する可能性があります。腎毒性鎮痛剤は非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）で、過剰に服用すると腎臓にダメージを与える可能性のある薬です。糖尿病や腎症の患者さんでは、NSAIDsを過剰に服用する事で腎臓の悪化が早まることがあります。

6.リン酸塩の摂りすぎ

リン酸塩は合法的な食品添加物ですが、リンの過剰摂取はリン酸塩、カルシウム、ビタミンDのホルモン調節を乱し、ミネラル代謝の乱れ、血管石灰化、尿細管障害、腎機能低下などを引き起こす可能性があるとされています。2005年から2006年にかけて、アメリカ人はリンの最大許容摂取量に近い量を摂取しているということが判明しました。この背景には、加工食品にリン系添加物が多く使用されていることが関係していると考えられています。 [5][6]

7.重金属、有害化学物質

腎臓は、カドミウム、水銀、鉛などの腎毒性を有する重金属の最初の標的臓器です。しかも、腎臓に蓄積されやすく、尿中に排泄されにくいという特徴があります。 [7]

例えば、タバコにはカドミウムや鉛などの重金属が含まれており、腎臓の尿細管を損傷する可能性があります。ニコチンには血管収縮作用があり、血圧を上昇させ、腎臓の血流を悪くして、腎臓の血流と糸球体ろ過率を低下させます。喫煙者と大酒飲みは、慢性腎臓病のリスクが一般人の5倍と言われています。 [8][9]

断熱プラスチック製品や台所用品などに広く使われているメラミンは、腎毒性を有する化学物質です。そのほとんどは尿中に排泄されますが、メラミンは腎臓の尿細管を傷つけ、結石の形成や初期の腎臓障害のリスクを高め、腎不全を引き起こすこともあります。

（翻訳・香原咲）