米連邦最高裁は30日、火力発電に伴う温室効果ガスの排出規制について、米環境保護局(EPA)の権限を制限する判断を下した。ロバーツ判事ほか5人の保守系判事が賛成票を投じ、リベラル派判事3人が反対意見を述べた。訴訟案件は下級審へと差し戻される。
火力発電所の二酸化炭素排出量の制限を巡って、ウェストバージニア州と他の18の州は環境保護局を相手取り訴訟を提起していた。判決文では、石炭火力発電からの移行を進めるために二酸化炭素の排出量制限を設けることは「今日の危機に対する解決策」であるとしつつ、連邦議会は環境保護局に対し独自の規制を設ける権限を与えていないと指摘した。
そのうえで、全国に影響を及ぼし得る重大な決定は、議会またはその委任を受けた機関でなければ下すことができないと判じた。
ウェストバージニア州のパトリック・モリシー司法長官は以前、大紀元の取材に対し「(環境保護局は)環境規制当局から中央エネルギー計画当局に変身しようとしている」と批判していた。連邦最高裁の判断を受けて「私たちは長年、EPAは炭素排出量の規制において限られた権限しか持っていないと主張してきた」と語った。経済的・政治的な影響が大きい問題については、官僚ではなく議会が介入する必要があると強調した。
いっぽう、リベラル派のエレナ・ケイガン判事は、「我々の時代の最も差し迫った環境問題」を解決すべく環境保護局に与えられた権限を「はく奪」したとして、今回の判断を批判した。
米国では、気候変動への対応として二酸化炭素等の排出規制を求めるリベラル派と、規制緩和を求める保守派との間で意見の対立が見られている。
民主党のオバマ政権時に環境保護庁が打ち出した二酸化炭素排出削減政策「クリーン・パワー・プラン(CPP)」は、発電所への規制を強化した。しかし、同政策は2016年、連邦最高裁によって覆された。
その後トランプ政権は規制緩和へと方向を転換し、「アフォーダブル・クリーン・エネルギー・ルール(ACEルール)」で業界への規制を緩和した。
2021年1月19日、コロンビア特別区巡回控訴裁判所(地裁)は、トランプ政権下の環境保護局は大気浄化法を誤って解釈していたとして、ACEルールを破棄。環境保護局の権限を一部回復させていた。
連邦最高裁は今回の判断で、巡回区控訴裁判所の判決を破棄し、差し戻した。
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