今日のエネルギー危機は70年代オイルショックより深刻、より長く続く可能性=IEA事務局長

2022/06/02
更新: 2024/06/28

国際エネルギー機関(IEA)ファティ・ビロル事務局長は、現在のエネルギー危機は1970年代のオイルショックよりも「はるかに大きく」、長く続く可能性があると警告した。1970年代、米国では2度の大きなオイルショックがあり、インフレが暴走した。

ビロル氏は、ドイツの日刊紙シュピーゲルのインタビューで、「当時は石油だけの問題だったが、今回は石油危機ガス危機電力危機が同時に起きている」と語った。

ロシアのウクライナ侵攻は、すでに存在していた世界のエネルギー問題を深刻化させた。この戦争の結果、西側諸国はモスクワに対してますます厳しい制裁を科している。

ビロル氏によれば、今夏にはより大きな供給制約を強いられることになるという。「欧州と米国とで主要な休暇シーズンが始まれば、燃料需要が増加し、欧州ではディーゼル、ガソリン、灯油などの不足が生じる可能性がある」と述べた。

石油、天然ガス、石炭の主要供給国であるロシアは、EUの石油輸入の約36パーセントを占めている。

5月31日、EU首脳は、クレムリンに対する第6次制裁措置の一環として、2022年末までにロシアの石油輸入を一部禁止することに合意した。この新しい計画により、EUはロシアの石油輸入のほぼ90%を禁止することになった。

この発表以来、世界はロシアの生産量を他から調達しようと躍起になっており、原油価格は急騰している。

米国では、5月31日にガソリン価格が過去最高を記録した。AAAによると、1週間前の4.598ドルから、全国平均で4.622ドルにまで跳ね上がった。

「過去50年間で戦略的備蓄が使われたのは5回だけだが、この数カ月で2回も使ったことになる。このことは、このエネルギー危機がいかに深刻かを示している」とビロル氏は述べた。

また、冬の厳しい天候のため、ヨーロッパ諸国は天然ガスの配給を余儀なくされるだろうと予測した。

1973〜74年の石油危機では、先進国は準備不足で、主要産油国が仕掛けた石油禁輸にうまく対応できなかったことを認識した。そこで、石油の供給が途絶えたときに、加盟国を支援するために設立されたのがIEAである。

「3月、IEAは先進国に対し、短期間石油使用量を削減するための10項目の計画を提示した」とビロル氏は述べた。

シュピーゲル紙のインタビューでは、ドイツ政府が数十年にわたりロシアのエネルギーに依存していることについても批判している。

「2004年の時点で、我々は、ドイツがロシアの天然ガスに依存しすぎていると政府に警告した。そして、メルケル政権の時代にもこの問題を指摘した。しかし、ガス輸入に占めるロシアの割合は増え続けていた」とビロル氏は語った。

石油史家のダニエル・ヤーギン氏も先月のブルームバーグのインタビューで、「今日のエネルギー危機は1970年代よりも『潜在的に悪い』。石油部門だけでなく天然ガスや石炭産業にも波及している」と述べている。

1970年代の2大オイルショックは、1973年のアラブ・イスラエル戦争と1979年のイラン革命が引き金となった。このショックにより、エネルギー供給が大幅に減少した。

当時、米国ではすでにインフレが進行していたが、2度のオイルショックにより、インフレ率は2ケタになった。石油危機は、米国に多くの教訓を与えた。その一つが、石油の海外依存度を最小にすることに重点を置いたことである。
ウクライナ戦争前に、ガス価格の高騰は1970年代初頭の石油危機を彷彿とさせる、と警告した人もいた。

ドイツ銀行のアナリスト、ヘンリー・アレン氏は昨年秋のレポートで、「地球が化石燃料からの離脱をさらに進めようとする中で、この10年の間にエネルギーショックがさらに起こる可能性がある」と書いている。

プライス・フューチャーズ・グループのエネルギーアナリスト、フィリップ・フリン氏によれば、最近のEUによる石油禁止令によって、米国ではガソリン価格が高止まりする可能性があるとのことだ。

「石油価格は、何もかもが足りず、これからもっと足りなくなるので、ここ10年にわたり石油価格の上昇は続く。精製能力は不足しており、今度はヨーロッパがロシアの石油禁止を進めているため、原油が不足することになる」とフリン氏は報告している。

北米電気信頼性公社(NERC)の最近の調査によると、この夏、北米の多くの地域で停電の危険があるとのことだ。

電力施設の休止、サプライチェーンの問題、猛暑のため、夏の大規模な停電が予想される。同報告書は、五大湖から中西部までの米国とカナダの大部分で、需要の増加により電力供給に負担がかかると警告している。

(翻訳・大室誠)

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、バイデン政権担当記者。トランプ政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。