中国官製メディアはこのほど方針を転換し、ウクライナに肯定的な報道を続けている。
新華社通信傘下の機関紙「参考消息」は3日、「シェルターの中で国の舵を取るゼレンスキー大統領」と題するスペイン紙「El País(エル・パイス)」の報道を転載した。
戦時のゼレンスキー大統領の活躍ぶりを称賛する内容が中心で、ロシアのウクライナ侵攻をはじめて「侵略」と表現し、ブチャでロシア軍による虐殺があったと間接的に伝えた。
中国官製メディアの報道としては極めて異例な内容だ。ロシアのウクライナ侵攻以来、中国官製メディアはほとんどロシア官製メディアのニュースしか転載せず、中国国内SNSではウクライナ寄りの投稿はすぐに削除されていた。
在米中国問題専門家の唐靖遠氏は「中国共産党の報道機関がゼレンスキー大統領とウクライナの自衛戦争を肯定的に報道したことや、ウクライナに対する国際社会の支援を前向きに伝えたのは初めてだ」と話した。
同じく5月3日、新華社は動画ニュースで「ウクライナは全土奪還のために戦うと宣言、ロシアはNATOとEUは米国に『服従』していると批判」という報道を出した。
同報道はウクライナの立場から、イエルマク大統領府長官の「独立、主権、領土保全は、ウクライナ側がロシアとの交渉で絶対に妥協しない基本問題である」という発言を伝えた。
また、新華社は4月30日に掲載したウクライナのドミトロ・クレバ外相の「書面インタビュー」記事で、クレバ外相の言葉として、同戦争を4回ほど「侵略」と表現し、ロシアの侵略によりさまざまな危機が起きたと報じた。
一方、4月29日の中国外務省の定例記者会見で、米国に対する辛らつ批判で知られる「戦狼報道官」の趙立堅氏は、AFP通信記者への回答で、中米両国国民は「常に友好的感情を持ち」、両国民間の友情が両国関係発展の基礎であると強調し、急にトーンを変えた。
唐靖遠氏は、中国当局が態度を軟化させたのは米国と真剣勝負する勇気がまだないためだと分析した。そして、米国を一時的に欺くためだと指摘した。
米下院は4月28日、「習の干渉と転覆の評価」という法案(略称・軸法、AXIS Act)を可決した。同法は米国務省に対し、中国によるロシアへの援助、国際制裁回避への幇助などを定期的に報告することを求めるものだ。米政府の対中強硬姿勢が中国の態度に影響しているとみられる。
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