(前稿より続く)
陳蓉花さんのように、加齢のほか、重病や大けがで長期入院したような場合、筋肉の減少は特に顕著に見られます。
筋肉の減少は「死亡リスクを招く」
それに加えて、本人が運動することへの意欲を失ってしまうこともあります。
そうなると、さらに体力低下の悪循環にはまってしまいます。
康禾漢方医院の医師で、トレーナーでもある楊宗翰氏は、「筋肉量が減少すると、体力が落ち、身体機能が低下することで機能不全に陥りやすくなります。これは、生活の質を低下させるだけでなく、死亡リスクも増加するのです」と話します。
しかし、何らかの原因があって一時的に筋肉量が減ったとしても、その原因となる病気や外傷を治療した後に、適切な運動を再開すれば、失った筋肉を回復させることは可能です。
筋肉量が増えると、基礎代謝率が高まります。
内湖恒新リハビリ科医院の王思恒院長は、「筋肉量の多い人は糖尿病、心臓血管疾患、サルコペニア、認知症、骨粗鬆症など多くの慢性疾患を発症しにくいのです。また適度な運動は、精神的ストレスを軽減し、睡眠障害などの問題も改善できます」と話します。
陳蓉花さんの息子で、インストラクターのダニエルさんによると、「高齢者が筋トレすることのもう1つの利点は、神経系を刺激することによって、脳が自分の筋肉と体をコントロールする能力を高められることです」と言います。
「自分でできなくなる」という苦しみ
確かに、脳の機能が退化すると、体に十分な筋肉があっても、物を持ったり、カートを押したりするなど、自分がやりたい動作をうまく実現できなくなります。
それは本人にとって、非常に大きな精神的ストレスとなります。
筋力を落とさないことは、脳の機能を退化させないことにもつながるのです。
ダニエルさんによると、高齢者の運動とはいっても、軽いものばかりではなく、適度に負荷をかけて筋肉を刺激する必要があるとして、次のように言います。
「大切なことは、高齢になっても、できる運動を続けることです。それこそが、老化を相殺する唯一の方法なのです」
日中に運動して「夜はよく眠る」
高齢者あるいは中年以上の人が始める筋力トレーニングは、決して難しくありませんが、以下の3つのポイントは、ぜひ押さえてください。
1、運動習慣を身につける
まずは簡単な動作から始めます。
ただし、トレーニングを始めたばかりの人は「成果が出ないからやめたい」と思いがちなので、その怠惰な気持ちは自分で克服しましょう。
ともかく運動習慣を身につけることを目標に、自分が喜んで続けられるようにしてください。
はじめは週2~3回、30分だけの簡単な運動でも結構です。
今まで運動経験のない人でも、自分の進歩を実感することができれば、次回はもっと多くの時間をトレーニングに使いたいと思うようになります。
2、専門家の指導を受ける
高齢者の筋トレは、安全に行うことが大前提です。
そのため、可能であればジムヘ行き、専門のインストラクターやトレーナーの指導を受けることが望ましいでしょう。
専門のインストラクターがいれば、高齢者に合ったトレーニング計画を立てて、効果的かつ段階的に指導を進めてくれます。
また、監督者がいればトレーニング中の事故を防げるとともに、万一、ジムで体調の急変が起きた場合、適切に初期対応をしてくれるはずです。
3、「栄養バランスのとれた食事」と「十分な睡眠」をとる
筋トレを支えるのは、何と言っても「栄養バランスのとれた食事」です。
タンパク質、カルシウム、ビタミンD、良質の炭水化物(精製されてない主食)、食物繊維などは、とくに意識して、十分に補給します。
また、トレーニングで負荷をかけた後の筋肉は、休息させることによって強く再生します。そのため、夜は安心して、十分な睡眠をとるようにしてください。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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