中国とロシアによる宇宙空間の活動が活発化するなか、米国防総省はより安全な行動規範を確立しようとしている。同省のジョン・ヒル国防次官補代理代行(国防長官府宇宙政策担当)は米シンクタンク・戦略国際問題研究所の討論会で軍備管理協定の重要性を訴えた。
ヒル氏は20日、対空兵器の開発に関する討論会で、宇宙空間における安全で責任ある行動規範を国家間で共有することで「リスク軽減策を推進するほか、安定性を高め、不確実性を減らすことができる」と発言した。
中国共産党は1月に発表した「2021中国の宇宙航空」白書で、「宇宙大国」になるという政権の野望を詳述した。地球軌道上の人工衛星を攻撃する衛星攻撃兵器(ASAT)の開発に取り組んでおり、宇宙産業を「国家戦略全体の重要な要素」と表現している。
中国とロシアが行ったASATのミサイル発射実験について、ヒル氏は米国が長年にわたる米国の信条に従って、宇宙のルールを国際的に承認する必要があると主張。「法的拘束力のない国連総会第一委員会の決議を求めることで、すべての国に対してASATのミサイル発射実験を行わないよう促し」、同実験に対する政治的圧力を高めることができると強調した。
同決定を法的拘束力のある軍備管理協定にすることには長期期間を要するが、公平で米国の国家安全保障と同盟国やパートナーの利益に適うものでなければならないとする米国の長年の宇宙政策にかなうと述べた。
これに関連してハリス米副大統領は18日、西部カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地を訪問した際、米国がASATの実験を中止すると発表した。過去に中露が同実験を実施したことについては「無謀で無責任だ」と非難した上で、「米国はこうした宣言をした初めての国だ」と強調した。
宇宙空間の安全と平和を促進するためのシンクタンク、セキュアワールド財団(SWF)のビクトリア・サムソン氏は、ロシアのASAT実験などを受け、このような一方的な意思決定はますます必要になると指摘。「過去15年間、同じような条約を提案し続けたが実現していない。宇宙環境はますます複雑になっている」と懸念を表明した。
米国防総省は、中国とロシアによる宇宙空間の活動範囲の「劇的な」増加を警告している。12日に発表した「宇宙における安全保障の課題レポート2022」によれば、2カ国は2019年以来、軌道上の宇宙資産を70%増加させた。
「米国の主要な戦略的競争相手であるロシアと中国は、宇宙領域における米国と同盟国を弱体化させるための措置を講じている」と同省情報局の宇宙情報担当官ジョン・フート氏はレポート発表時の会見で述べた。
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