中国、南シナ海の完全な軍事化を図る=米専門家

2022/03/29
更新: 2022/03/29

米インド太平洋軍のジョン・アキリーノ司令官(海軍大将)はこのほど、中国南シナ海にある係争中の少なくとも3つの島を完全に軍事化したと明らかにした。米国の安全保障アナリストは、中国はこの地域を支配していくというメッセージを国際社会に送りたい意図があるとの見解を示した。

中国と東南アジアの複数の国は南シナ海の領有権をめぐって争っている。国際裁判所は中国側の主張を退けたが、中国は南シナ海で人工島を建設し、軍事化を通して、自らの主張を押し通そうとしている。

米太平洋艦隊の諜報情報作戦部ディレクターだったジェームズ・ファネル(James Fanell)氏は、中国が3島を完全に軍事化したことについて「これは、主権の主張を南シナ海まで拡大するという中国側の重大な戦略的目標を深化させたことを反映した」と大紀元に語った。

米海軍の元士官であるカーク・リポルド(Kirk Lippold)氏は、ファネル氏の見解に賛成した。「中国はこの目標を達成するために、外交、経済、情報、軍事を含むすべての国力の手段(instruments of national power)を使っている」と同氏は述べた。

リポルド氏は、中国指導部は経済的かつ軍事的支配と力ずくで覇権を握ろうとしていると批判した。この目的を達成するために「中国は米国や各国の知的財産権を窃取し、資源や製造業において各国が中国に頼らざるを得ないというグローバル経済モデルを構築している」という。

リポルド氏は、国連や世界銀行などの国際機関が依然として中国を「途上国」と認識していることに異議を唱えた。

「中国は過去20年間、世論を操り、欧米各国に中国がまだ途上国であることを信じさせてきた」

2019年、中国国家航天局は月のダークサイドと呼ばれる裏側に無人月探査機「嫦娥4号」を着陸させた。21年、中国は核弾頭を搭載できる極超音速滑空体(HGV)の飛行実験を行った。

「これらの事実から、いまだに中国を途上国と認識するのはおかしい。これらの活動は経済力を持つ大国にしかできないことだ」

国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算では、海上貿易の約6割はアジアを通過しており、その3分の1は南シナ海を経由している。

リポルド氏は、中国はこれらの海上交通を支配したい狙いがあると指摘した。「中国側はこれらの貿易ルートを制御することで、世界を支配する大国に一歩近づくとわかっている」という。同氏は、世界各国の経済や国家安全保障に打撃を与える中国による南シナ海の軍事化を許してはいけないと強調した。

ファネル氏は「中国は南シナ海の人工島を対空・対艦兵器で完全に軍事化することで、米国の国家安全保障政策担当者に、台湾の防衛に乗り出すことを考え直させようとしている」との見方を示した。また、中国による南シナ海の軍事化は「インド太平洋地域の軍事的パワーバランスの大きな変化を意味する」と述べた。

この変化に米国は圧力を感じているという。米政府はインド太平洋地域で軍事的存在感と軍事力を高めなければならない上、米国と同じ志を持つ同盟国で米軍基地や他の軍用施設を拡大しなければならない。

いっぽう、リポルド氏は台湾問題をめぐって、今、米中間で軍事衝突が起きても米国が優勢になるとの考えを示したが、中国海軍の艦艇の急増に強い懸念を示した。

米国議会調査局の3月の報告書によると、中国海軍が保有する様々な種類の軍艦は約355隻で、米海軍の軍艦数を上回る。2025年までに中国海軍の軍艦数は420隻に達し、30年までに460隻に増加する見込みだという。

「これだけの数の軍艦が海に投入されれば、ライバルとまではいかなくても、米海軍にとってチャレンジ的な存在になるに違いない 」とリポルド氏は警告した。

(翻訳編集・張哲)

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