中国船、台湾海峡の砂吸い上げる 「海洋生態系を破壊」

2022/02/09
更新: 2022/02/09

中国の砂上ポンプ船が近年、境界線を越え台湾海域で頻繁に海砂を窃取している。台湾海巡署(海上保安庁に相当)は過去5年間、4340隻以上の中国採取船や運送船を駆逐した。専門家は、中国側による海砂採取で台湾海域の海洋生態系が破壊され、国家安全保障に脅威を与える恐れがあると警告した。米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が8日報じた。

報道によると、中国船の8割は台湾海峡南側の「台湾浅灘(または台湾灘)」で駆逐された。海巡署は2019年10月、中国砂上ポンプ船と海砂輸送船をそれぞれ1隻拿捕し、中国籍船員27人を拘束し起訴した。中国側が採取した海砂の99%は陸地に由来する陸源の砂岩だという。

台湾農業委員会(農林水産省に相当)澎湖海洋生物研究センターの謝恒毅主任は、「1つの可能性は(中国採取船が)陸源堆積物が集まる場所の近くで取ったかもしれない。もう1つの可能性は、中国側は台湾浅灘で長期的かつ広範囲に海砂を採取したことで、底質表層の生物起源の堆積物も全部採ったと考えられる。中国側の船は底質の深いところまで届いていると思う」と話した。

謝氏は後者の可能性が非常に高いとの認識を示した。中国側による長期的な違法海砂採取で、台湾海域の環境破壊は急速に進んでいると同氏は懸念した。

台湾浅灘は台湾・澎湖諸島から西南方向、台湾海峡の南方にある。台湾国立アカデミー、中央研究院の鄭明修研究員によると、この海域の堆積物は、氷河期に中国東南部の河川が堆積した三角州である。海底の堆積物は主に粗い石英。この地域の水深は40メートル、最浅部は8.6メートル。面積が約1万3000平方キロメートルの広大な砂地斜面であるという。

2020年に台湾浅灘で実地調査を行った鄭氏は、「ここはエビやカニ、魚などにとって良い産卵場所だ。しかし、数多くの中国船が違法に砂を採取しているため、ここの生態系は破壊されている」と述べた。

「中国の砂上ポンプ船は、多い時には50隻以上が一斉操業する。船の大きさは様々だ。私が見た砂上ポンプ船自体は4000トン以上あった。このような船は水深30メートルまで採取できる。その周りに海砂を運ぶ運送船もたくさんあった。最大2~3万トンとみられる。採取船などは昼夜をとわず操業していた。それぞれ違う会社の船だと思う」

鄭氏は、海砂は中国本土の各地や香港に運んでいるとした。

台湾メディア「自由時報」の報道では、中国船は台湾浅灘で毎年、数億立方メートルの海砂を窃取している。鄭明修氏は、少なくとも数千万トンの石英砂が採られたと推算した。台湾政府の国家海洋研究院は地質調査を行い、大量の石英砂が吸い上げられたことによって、海底の地形まで変化したと指摘した。

楊家俍・桃園市議員(民進党)は、香港国際空港の第3滑走路の埋め立て工事に台湾海域の海砂が使われたと指摘した。楊議員は2020年に情報筋から、同埋め立て工事を巡って、香港政府が中国企業に約1億立方メートルの砂を提供するよう要請したとの情報を入手した。

「中国本土の河砂の価格急騰のため、中国企業は6~8隻の船団を雇い、台湾の澎湖諸島・金馬海域で違法に海砂を採取した。これらの採取船は毎月8~12回操業していた。1隻につき5万~7.5万トンの砂を運んだ」

「あの1年間、中国企業は約100億台湾ドル(約414億円)の収益を得たとみられる。この行為によって、台湾の海洋生態系が破壊され、台湾経済は大きな損失を被った」と楊議員は非難した。

中国側の海砂採取を阻止するため、台湾立法院(国会に相当)は2020年末、中華民国専属経済海域及大陸礁層法(中華民国排他的経済水域および大陸棚法)の改正案を承認した。法案は、台湾の排他的経済水域(EEZ)に侵入し海砂を採取した者に、船を拿捕し、最高7年の懲役刑および1億台湾ドル(約4億円)の罰金を科すと規定。

海巡署の担当者はRFAの取材に対して、改正案が承認された後、駆逐する中国採取船の隻数が減ったと話した。2020年に駆逐した中国船3991隻に対して、21年は657隻となった。また、同署は、21年に拿捕した中国船5隻を公的オークションに出し、「得た1億3000万台湾ドル余りの収益を政府に渡した」という。

(翻訳編集・張哲)