中国政府によるウイグル人イスラム教徒、チベット人、香港市民等への迫害・弾圧の蔓延が物議を醸す中、2022年北京冬季オリンピックの開催を迎えた。これを機に中国に圧力をかけることを国際社会に促す複数の人権団体と元国連当局者が大詰めの訴えを行った。
2月4日から20日にかけて開催される今回の大会には、世界各国から数千人に上る選手、政府職員、外交官等が参加する。 ロンドンに拠点を置く国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、北京に代表団を派遣する諸国は冬季オリンピックおよび3月4日から13日にかけて開催される北京パラリンピックという機会を良好に利用して中国政府に改善を要請する必要があると訴えている。
アムネスティで中国研究を専門とするアルカン・アカド(Alkan Akad)研究員は声明を通して、「中国当局がスポーツを利用して問題から社会の目を逸らす単なる手段として北京冬季オリンピックを終わらせるべきではない。国際社会はこの中国政府の宣伝工作に加担してはならない」と主張している。
アカド研究員はまた、「大会は中国の凄まじい人権迫害の歴史から注意を逸らすために利用されるべきではない。反対に、今回の大会はこうした問題解決に向けて中国に圧力をかける良好な機会となるはずだ」とも述べている。
アムネスティの説明では、中国政府が大会開催期間中に報道の自由、労働者の権利、平和的デモを尊重するという公約に従うという証拠はない。 同研究員は、「中国では表現の自由の権利が体系的に侵害されている。だからこそ、当局が『取り扱いに注意を要する』と見なす問題を含め、IOC[国際オリンピック委員会]と国内オリンピック委員会(NOC)が人権について発言する意思のある選手やスポーツ関係者の意向を適切に尊重することが重要となる」と述べている。
アムネスティは上記の訴えに併せて、現在拘束されているウイグル人経済学者のイリハム・トフティ(Ilham Tohti)教授、張展(Zhang Zhan)市民記者、労働者の人権問題に取り組んできた李翘楚(Li Qiaochu)活動家、高智晟(Gao Zhisheng)人権派弁護士、チベット人ブロガーのリンチェン・ツルトゥリム(Rinchen Tsultrim)僧侶の中国人活動家5人の釈放を要請した。
アカド研究員は、「中国政府がオリンピックを国家宣伝の場として利用したいのであれば、まず平和的に人権擁護を訴えたというだけで訴追・拘留されたすべての人々を釈放することから始めるべきだ」と主張している。
チベット人、ウイグル人、モンゴル人などの少数派を代表する250超の市民社会団体の連合が、アントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)国連事務総長に対して北京冬季オリンピックへの不参加を求めた。
国連と米国などの西側諸国は、中国新疆ウイグル自治区に居住する1,200万人のウイグル人やテュルク(トルコ)系少数民族に対する中国の組織的な弾圧を「人道に対する罪」として非難しただけでなく、同自治区に向けた中国政策を大量虐殺(ジェノサイド)と認定した。
米国を含む数ヵ国はすでに北京オリンピックの外交ボイコットを表明している。
米国国務省の国際女性問題担当大使および国連女性の地位委員会(CSW)米国代表を務めた経歴を持つケリー・E・カリー(Kelley E. Currie)法務博士は、人権問題への対処を中国に強く要請しなかった国際オリンピック委員会と大会の企業スポンサーは同国を例外扱いしたことになると話している。
カリー法務博士は、「通常、同委員会は女性の権利やジェンダー問題、また他の人権問題には言及する」とし、「人権については、そのウェブサイトにも原則として明記されている。しかし、なぜか中国だけは例外として扱う。これに関しては企業スポンサーも同様である」と述べている。
同法務博士はまた、「さらに憂慮すべき現状として、同委員会が中国にだけは非常に慇懃な態度を維持し、口をつぐんでしまうことが挙げられる。さも委員会には責任などないと言わんばかりの態度である」とし、「これは国際オリンピック委員会の責任である」と主張している。
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