[ソウル/東京 30日 ロイター] – 韓国軍の合同参謀本部は30日朝、北朝鮮が東岸沖へ飛翔体を発射したと発表した。日本政府は、中距離以上の弾道弾だったと分析。専門家は、ここ数年で最大級のミサイル実験だった可能性を指摘している。
聯合ニュースによると、韓国軍は北朝鮮が発射したのは中距離弾道ミサイル(IRBM)だとした上で、800キロ飛行し、高度2000キロに達したとする同様の分析結果を示した。
北朝鮮は2018年に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を一時停止(モラトリアム)したが、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は北朝鮮がこの撤回に近付いたとの認識を示した。また、北朝鮮に緊張を高めることをやめ、協議に復帰するよう求めた。青瓦台(大統領府)が明らかにした。
韓国の合同参謀本部によると、午前7時52分ごろ、北朝鮮の慈江道から弾道ミサイル1発と思われる飛翔体が東岸沖に向けて発射された。慈江道では今月、北朝鮮が「極超音速ミサイル」とする飛翔体を2回にわたって発射している。
日本政府も同様の飛行距離、高度だったと分析。通常より高い角度で打ち上げて飛距離を抑える「ロフテッド軌道」で発射されたとみている。
松野博一官房長官は会見し、中距離以上の弾道ミサイルだった可能性があり、約30分間飛行して日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定していると発表した。現時点で被害は確認されていないという。
松野氏は、「烈度の高い弾道ミサイル発射は国連の安保理決議に違反する」と語り、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に厳重に抗議したことを明らかにした。
専門家によると、飛行距離や高度が事実とすれば、北朝鮮がここ数年で最大級のミサイル実験を行ったことになるとしている。
ミサイルの専門家によると、これらのデータは、2017年に最後の実験が行われた「火星12」などのIRBMの実験を示す可能性もある。IRBMは通常、600─3500マイル(約1000─5500キロ)の射程を持ち、ICBMは3500マイルを超える射程がある。
「不拡散研究センター」の非常勤教授でミサイルコンサルタントのジョージ・ウィリアム・ハーバート氏は「IRBMかICBMかにかかわらず、これはある種の戦略ミサイルであり、2022年1月これまでの一連の実験とは明らかに異なる」とツイッターに投稿した。
北朝鮮を監視するコリア・リスク・グループのチャド・オキャロル最高経営責任者(CEO)はツイッターで、「全ての兆候はこれが大きな実験であることを示唆している。以前の北朝鮮のICBMほどのパフォーマンスではないが、より限定的な軌道で意図的に飛ばした可能性がある」と指摘した。
梨花女子大学(ソウル)のリーフエリック・イーズリー教授によると、今回の発射は北朝鮮の軍備の近代化、北朝鮮のいくつかの祝日を前にした民族の誇りの向上、新型コロナウイルスに伴うロックダウンや制裁による経済危機に直面する中で北朝鮮の強さを示すことを目的としているとみられる。
同教授は「金正恩体制は、国内の弱さを指摘する外部の議論を聞き、韓国の強さが増しているのを見ている」と指摘。「そのため、北朝鮮は自国の体制を転覆しようとする試みは非常に高くつくということを米国と韓国に再認識させたいのだろう」と述べた。
北朝鮮によるミサイルの発射は今年7回目。北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は28日、長距離巡航ミサイルを25日に、地対地戦術誘導ミサイルを27日に発射したと伝えた。
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