中国の「キツネ狩り作戦」、過去2年間海外で自国民2500人超を連行=人権団体

2022/01/19
更新: 2022/01/19

最新報告書によると、中国当局は過去2年間、「海外逃亡者」と認定した自国民2500人以上を国内に連行した。

キツネ狩り作戦

国際人権団体、セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)が18日に発表した報告書は、中共ウイルス(新型コロナ)の大流行中、各国が入国・渡航制限を課したにもかかわらず、中国当局に指定された「経済犯罪者」「汚職者」らは海外から中国国内に送還された。中国側の公表では、2020年に1421人、21年には1114人の「自国民」を連行した。

同団体によると、中国当局が家族への脅迫や「当局に認められた拉致行為」などの手段を通じて、過去7年間で1万人以上の人を捕まえ中国に連行した。中国当局は、海外に資産を持ち逃げした汚職役人を捕まえ中国に連れ戻そうと、14年に「キツネ狩り作戦」、15年には「天網計画」を実施した。

中国の汚職摘発機関、国家監察委員会は昨年12月、「今年は実りある1年だった」と誇示した。同委員会は昨年2月に「天網計画」を再開し、対象者の範囲は汚職役人から「政治的逃亡者」まで拡大した。

人権団体は、中国当局が海外在住のウイグル人や香港人を含む、人権活動家や反体制派を標的にしていると認識する。

昨年7月、米ワシントンに本部を置く人権擁護団体「ウイグル人権プロジェクト(Uyghur Human Rights Project)」は、ウイグル人が外国政府に国外追放され、身柄を中国側に引き渡され、中国国内に送還された事件は395件にのぼると示した。

下劣な手口

報告書は、中国当局が「逃亡者」に、下劣で違法な手段で帰国を強要していると批判した。

身柄引き渡しや国外退去などの正式な二国間協定を除き、中国当局はパスポートの更新拒否、国際刑事警察機構(インターポール)が発令するレッド・ノーティス(国際手配書)の乱用、対象者の家族に対する脅迫や嫌がらせ、外国に潜入する中国人工作員による直接的脅迫などがあると、報告書は指摘した。

米国永住権保持者である王靖渝氏(19歳)は昨年、2020年6月に中印国境で起きた武力衝突を巡って、中国官製メディアが報じた中国軍の死者数について、ネット上で疑問を呈した。中国当局は帰国を要求したが、王氏が拒否すると、国内にいる王氏の両親に対して何度も嫌がらせをし、拘束して、圧力をかけた。

国家監察委員会の発表によると、2014~20年6月までに「国際手配被疑者100人」のうち60人が帰国したという。うち44人は説得に応じて、あるいは自ら帰国したという。

中国当局は「キツネ狩り作戦」を成功させるために、工作員や捜査員、警官を海外に送り込んでいる。

米ニューヨークの連邦大陪審は昨年7月、同作戦を無断で米国内で実行したとして、中国の捜査員9人をストーカー行為などの罪で起訴した。報道によると、9人は2016~19年ごろ、米国に住む中国人男性を帰国させることを計画。当局は男性の父親を渡米させ、「帰国しないと家族に危害を加える」と男性に迫ったこともあった。

拉致

セーフガード・ディフェンダーズの報告書によると、中国当局は時に拉致、誘拐を実行する。

中国側は現地国の警察当局と秘密作戦を実施する場合、ターゲットを身柄引き渡しが可能な第三国へ誘導することもあるという。

同人権団体は中国当局が関与した80件の拉致事件を紹介した。うち約半数は成功したという。拉致は米、英、豪など数十カ国で実行されている。

中国共産党中央規律検査委員会は15年、すでに70以上の「専門チーム」を90の国・地域に派遣したと発表した。

セーフガード・ディフェンダーズは各国政府に対し、「各国の司法権を侵害した」として、中国当局との身柄引渡協定を終了するよう呼びかけた。

(翻訳編集・李凌)