ジェトロが実施した調査によると、サプライチェーンにおける人権問題について、6割の在米日系企業が経営課題とみなしていることがわかった。
同調査は9月8日から28日にかけて実施し米国・カナダの日系企業1878社(米国1697社、カナダ181社)が回答。結果は12月17日に発表された。回答社の業種は、自動車等が81.8%、ゴム・窯業・土石が81.3%、電気・電子機器部品が75.0%だった。
人権意識の理由づけについて「人権問題の定期監査が実施されているから」「顧客からの問い合わせが増えているから」などの声があったという。新疆ウイグル自治区などの人権侵害に取り組むバイデン政権の通商政策を挙げる企業もあった。米国では今年3月、新疆で生産された製品の輸入を原則禁止する法律が施行される。
人権被害リスクに対する予防策として、「新疆綿の不使用」「児童労働に依拠した原料を使わない」「人権侵害リスクを回避するためのオンライントレーニングを実施」などが並んだ。また、3割の納品先企業からサプライチェーンにおける人権尊重に関する方針への基準を求められたことがあるという。
また、サプライチェーンを含む事業戦略の見直しについて尋ねたところ、見直しの予定がある企業のうち82.3%が「調達先の見直し」、41.9%が「販売先の見直し」、40.4%が「生産地の見直し」と回答した。
生産の見直し予定がある企業の業種別では、自動車等部品(36.7%)、化学・医薬(36.6%)、その他製造業(34.4%)の順で高かった。
業績に関して、2021年に黒字を見込む日系企業の割合は米国で59.2%となり、前年(47.1%)から12.1ポイント増加した。カナダでは67.5%と前年(53.8%)から13.7ポイント増加した。両国とも前年比で10ポイント以上増加したが、 2019年の水準(米国66.1%、カナダ77.1%)までは回復しなかった。
いっぽう中共ウイルス(新型コロナウイルス)のワクチン接種が進み経済が再開したことで、在北米日系企業の業績回復が見込まれる。今後1〜2年の事業拡大を検討する企業は米国が5割、カナダが4割におよび、2019年の水準を上回った。
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