日米豪協力で太平洋3カ国の海底ケーブル敷設 インターネット接続の改善図る

2021/12/14
更新: 2021/12/14

日米豪は太平洋島嶼国家のミクロネシア連邦、キリバス、ナウルと協力して、新しい海底ケーブル建設資金を提供し、これら3カ国のインターネット接続の改善を図る。この建設計画は半年前、中国企業が入札で落札する可能性があったため米側がセキュリティ上の懸念を示し、公募自体が取り消しになった経緯がある。

オーストラリア政府は12日、6カ国の首脳や外相ら連名の共同声明を発表した。それによると「海底ケーブルは3カ国の約10万人により高速で高品質な、信頼性の高い安全な通信を提供する」「経済成長の促進、開発機会の促進、生活水準の向上が期待できる」という。

このインフラ計画は世界銀行やアジア開発銀行(ADB)の融資を受ける。日米豪は太平洋地域で以前もパラオに共同で海底ケーブル支援を行った。声明によれば、このプロジェクトは米政権が発表した世界インフラ支援策ビルド・バック・ベター・ワールド(B3W)構想を補完するものだという。

海底ケーブルは国際通信の要

海底通信ケーブルは人工衛星よりもはるかに高いデータ伝送能力を持ち、国際通信の約95%を占める重要な通信インフラの根幹となっている。現在その世界シェアは日米欧の企業が約9割に上るものの中国企業が追随している。中国企業は政府補助を受けており、他社より割安な金額を提示することで、徐々にシェアを高めている。

同南太平洋の3カ国は今年6月までに海底ケーブル敷設計画「東ミクロネシアケーブル」の請負企業を公募していたが、中国政府支援の企業が他社より20%安い価格を提示し有利になると、米側が懸念を伝え公募自体がキャンセルになった。ロイター通信が関係筋からの話を報じている。

この世界銀行とアジア開発銀行が支援する海底ケーブル計画は、3カ国のほか米領グアムまで延伸するという。当時の入札には、中国軍との繋がりの強い華為技術の元傘下企業「華海通信技術(HMNテクノロジーズ、旧社名:華為海洋網絡=ファーウェイ・マリン・ネットワークス)」が参加していた。

入札前の2020年9月、米共和党ルビオ議員とクルーズ議員がミクロネシア連邦政府に書簡を送り「中国共産党が通信インフラを通じて、スパイ活動や地政学的な抑圧を推進している」と警告していた。

中国共産党はケーブルをスパイ活動に利用する意図はないと否定している。

米シンクタンクのアトランティック・カウンシルの上級フェローのジャスティン・シャーマン氏は9月、中国やロシアといった権威主義国は過去に通信網を軍事や政治操作に使用していると外交問題評議会への寄稿文で指摘している。

また、中国通信企業は共産党政権の管理下にあり、基地局情報を監視したり、衝突時には特定地域のネット遮断といったリスクがあるという。このため、米国は世界中のインターネット通信を支える物理的インフラのセキュリティには優先的に投資すべきだと提言している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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