豪拠点のシンクタンクであるローウィー国際政策研究所は5日に発表した「2021年アジアパワー指数」と題する報告書で、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の蔓延により、インド太平洋地域における中国の影響力が弱まり、今後10年間で米国を抜いてトップになることはできないだろうと、分析した。同報告書は、地域戦争のリスクが深まっていることを警告している。
同地域における総合力の上位10カ国は、米国、中国、日本、インド、ロシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、インドネシア、タイとなっている。
アジア太平洋地域で最も影響力のある国は依然として米国(100点満点で82.2点、前年比0.6点増)である。中国(74.6点、前年比1.5点減)は近年、指数における影響力を着実に高めており、2位を維持している。
パンデミックの長期的な影響により、ほとんどの国の総合力は昨年の指数に比べて低下している。だが、米国の総合力は2018年以来、初めて上昇に転じた。今回、米国は防衛、文化、軍事力の面でリードを維持しているだけでなく、地域における外交的影響力の面でも日本と中国を僅差で上回っている。
6位のオーストラリア(30.8点、前年比1.6点減)は近年、中国との関係が著しく悪化しており、中国共産党からの圧力が強まる中で健闘している。その一方で、オーストラリアの米国への依存度が高まっている。
インド太平洋地域の米国の同盟国がこれほどまでに米国に依存したことはかつてなかった。その理由は、中国(共産党)の台頭に対抗するための軍事的・戦略的バランスを保つためであるという。
アジアパワー指数の評価では、経済力や軍事力、経済関係、防衛ネットワーク、さらには外交的・文化的な影響力など、幅広い指標を考慮している。今回初めて、ワクチン外交を測る指標が盛り込まれた。
中国、10年以内に米国を追い越せず
この報告書を担当しているローウィー研究所のリサーチディレクター、ハーベ・ラメイユ(Hervé Lemahieu)氏は、ブルームバーグに対し、「この指標は、米国が中国と同等の競争力を維持できること、あるいは米国が主要な超大国としての地位を予想以上に長く維持できることを示している」と語った。
報告書では、中国の総合力が2018年の指数開始以来、初めて低下しており、中国がインド太平洋地域で優位性を獲得する明確な兆候は見られないと指摘している。パンデミックの発生から約2年が経過した今、中国が10年以内に総合力で主要なライバル国を上回ることはないだろう、と報告書は述べている。
中国のレジリエンス指標は改善されているものの、国内での生産・消費にシフトし、さらに孤立主義に向かっているため、その影響力は弱まっている。報告書では、中国は急速な高齢化と重い債務負担による下振れ圧力に対処する必要があると指摘している。
中国政府は、東南アジア諸国が米国との同盟に加わるのを阻止する一方で、ロシア、パキスタン、北朝鮮との軍事交流を強化し、この地域に中国と同盟関係にある核武装国の陣営を形成しようとしている。
これに対し、報告書は「インド太平洋地域で出現している軍事的パワーバランスが、地域の戦略的抑止力と安定に寄与しているかどうかは、依然として不明である。しかし、両者の敵意、米中の対立の幅広さ、複数の潜在的なフラッシュポイントの存在は、この地域が戦争の大きなリスクに直面していることを意味する」と警鐘を鳴らした。
日本、大国からミドルパワーに転落
日本は、2020年に比べて2.4点低い38.7点の総合スコアで3位。 大国の基準値である40点を初めて下回り、高水準のミドルパワー(中堅国家)に転落した。
報告によると、日本は限られた資源を使って地域に大きな影響力を行使する、典型的な賢い国である。しかし、日本はアジアの超大国として際立っているが、経済的衰退や高齢化により、2021年にはその影響力が低下している。
日本は経済力や外交的影響力、経済関係、防衛ネットワーク、文化的影響力の面で最も優れており、これらの分野では常に3位にランクされている。日本は防衛ネットワークで高い評価を得ており、この地域の11カ国にとって主要な防衛対話のパートナーとなっている。
報告書では、安倍晋三元首相が辞任後の1年間で、日本の外交的影響力が数ポイント、1ランク低下したと指摘している。
(翻訳編集・王君宜)
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