豪シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、19日に発表した報告書で、「新疆の弾圧を背後で主導しているのは中国共産党中央政法委員会である」と指摘した。同委員会は潜在的な「危険分子」を特定するシステムを運用し、数百万人分のウイグル人の情報を管理している。
「中央政法委員会」は、中国の国家の治安・司法機関(公安、国家安全、司法、監察、検察および法院)の指導にあたる機構で、各地方にも設置されている。
同委員会は、毛沢東時代に設立され、大躍進や文化大革命において重要な役割を果たした。のちに、習近平氏の「反腐敗闘争」で2013年に同委員会トップの周永康氏が失脚した後、その影響力は一時的に弱まったものの、近年、新疆では巻き返しを図った。
報告書は、新疆弾圧の開始後、中央政法委員会の「予算と機能」は大幅に拡大していると指摘した。
毛沢東時代の政治運動が新疆で再来
ASPIの報告書は2014~21年までの間に、中国政府が新疆で展開する統治メカニズムについて分析を行った。流出した警察文書、未公開の政府文書を含む数千の資料を調べた結果、ウイグル人への取り締まりは、毛沢東時代の「政治運動」と酷似していると特徴づけた。
ウイグル人は大規模な拘束や強制労働のほかに、公開批判大会、忠誠の誓い、習近平氏の健康を願うスローガンを叫ぶなどの「政治的パフォーマンス」への参加も強いられた。一般市民は隠されている「敵」を見つけ出し攻撃するよう動員されるという。いずれも毛沢東時代の政治運動を彷彿とさせる取り組みだ。
弾圧を主導する「中央政法委員会」
ASPIが入手した流出した警察の記録によると、中央政法委員会は新疆の少数民族を監視する大規模システム「一体化統合作戦プラットフォーム(IJOP)」を利用して情報を収集し、潜在的「危険分子」を特定している。海外からの電話や突然の来訪客など、わずかな手がかりも見逃さなかったという。
このシステムにマークされたウイグル人は「容疑者」として扱われる。弾圧政策の担当者はこのシステムを通じて他の担当者と情報を共有し、数百万人の「容疑者」情報が下級の担当者に割り当てられる。
報告書は、新疆で映画『マイノリティ・リポート』のリアル版が展開されていると喩えた。
2002年に米国で上映された同映画は監視社会と化した近未来で、今後、事件を起こすと予知された人物を事件勃発前に逮捕するシステムを導入し、殺人事件をゼロにするというSFエンタテインメント。
「中央政法委員会は中国当局の指導の下で、新疆で大量拘束などの直接責任を担っている」と報告書は指摘した。
AP通信の最近の記事は、新疆における有刺鉄線フェンスや軍用装甲車両、防犯カメラなどの数の減少を記録した。
それは、中国当局が運用する先端技術により、今後、監視設備を使用する可能性がなくなることを意味するものだと報告書は指摘した。
(翻訳編集・李凌)
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