インド太平洋地域で「強制失踪」阻止に取り組む

2021/08/27
更新: 2021/08/27

中国の内部告発者からミャンマーの軍事クーデター抗議者に至るまで、権威主義政権はこうした政敵を排除するために「強制失踪」という手段を使う。そのため、今もインド太平洋地域で異議を訴える人々の意見は高い頻度で黙殺される。

国際連合(UN)が定めた8月30日の「強制失踪の被害者のための国際デー」は、犯罪行為である強制失踪に対する国際社会の意識向上を図り、当該政府にその慣行の停止を促す活動を啓発することを目的としている。

国連の定義によると、強制失踪とは長期間にわたり法の保護外に個人を置くことを意図した国家機関または国家の支援を受けて行動する人物が個人を逮捕、拘留、誘拐、自由を剥奪し、同措置に続いて当該機関または当該人物が「当該個人の自由を剥奪したことを否認すること、あるいは当該個人の運命または所在に関する情報の提供を拒否すること」である。

これは世界規模で考慮されるべき問題であるが、長年にわたりバングラデシュ、北朝鮮、スリランカが複数の人権監視団体の批判の対象となっているように特定のインド太平洋地域では同慣行が特に深刻化している。

しかし、2021年2月に発生したミャンマーの軍事クーデターと中国政府の検閲政策により、この2ヵ国に新たな注目が集まることになった。

非営利団体の「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」が2021年6月に更新した一連の報告書には、中国では警察が弁護士を排除して容疑者の外部接触を拒否できる一種の裁判外拘留が増えていると記されている。

同非営利団体の報告では、中国の「指定居所監視居住(RSDL)」と呼ばれる勾留措置において裁判で有罪が確定する前の段階で国家安保関連の法律違反で拘束された容疑者に対して尋問、殴打、強制投薬を行うことが許可されている。同団体の推定によると年間1万人から1万5,000人が同措置により拘留されている。

中国政府が100万人に及ぶウイグル人イスラム教徒等を強制収容所に収容している新疆ウイグル自治区でも強制失踪が発生している。

2021年3月、「ファイブ・アイズ(Five Eyes)」情報共有協定に加盟している米国、オーストラリア、ニュージーランドなどの諸国と欧州連合はウイグル人虐待を理由に中国を制裁対象とした。

アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は声明を通して、「主にイスラム教徒であるウイグル人および新疆ウイグル自治区に居住する少数民族や宗教的少数派の弾圧政策を継続している中国政府に対し、米国は同政策に終止符を打つことを繰り返し要請する。

これには強制収容所や収容施設で恣意的に抑留されている人々を全員解放することが含まれる」と述べている。

擁護団体のヒューマン・ライツ・ウォッチがの報告では、軍事クーデター発生以来ミャンマーでは900人以上に上る抗議者や傍観者が軍人により殺害され100人以上が強制失踪になっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのブラッド・アダムズ(Brad Adams)アジア局長は、「昨年の選挙結果を尊重すること、また国民の意思が反映された政府を求めたという理由だけで、国民の殺害、拷問、恣意的拘禁を続けてきたミャンマー軍事政権に対して大衆からは継続的に大規模な抗議の声が上がっている」と説明している。

 AP通信によると、米国は2021年4月にミャンマー国軍に関連する個人および同国軍が所有する企業に制裁を課した。制裁対象の中には軍事政権の主要収入源の1つとなっていた軍管理下の宝石事業が含まれる。

(Indo-Pacific Defence Forum)