中国、国際交流基金で訪日の中国知識人200人がやり玉に

2021/06/11
更新: 2021/06/11

中国の知識人約200人が過去、日本政府が支援した日中交流プロジェクトに参加したことで、一部の中国人ネットユーザーにやり玉に挙げられた。その一方で、中国外務省愛国主義者に同調せず、日中間の交流活動に理解を示したことが注目された。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは8日、日本外務省が支援する国際交流基金が2008年、日中交流を促進するために、中国メディアやネット上で影響力のある知識人らを日本に招くプロジェクトを開始したと報じた。

外務省の公表では、2019年までに196人の中国人研究者が、政府補助金を受け、日本を訪問した。なかに、中国政法大学の何兵教授、作家の蒋方舟氏や熊培雲氏、ジャーナリストの段洪慶氏ら有名人が含まれている。

一部の愛国主義者はネット上で、蒋方舟氏(32)に対してバッシングを強めた。蒋氏は2015~16年まで同プロジェクトに参加し日本に滞在した。帰国後、著書の『東京一年』(東京での1年間)を執筆した。これについて、愛国主義者らは「日本側からお金をもらって、日本のためにプロパガンダ宣伝を行った」「敵国と結託した裏切り者」などと蒋氏を批判した。また、中国官製メディア「観察者網」などは、「文化漢奸」と罵倒した。

蒋氏は中国版ツイッター、微博(ウェイボー)において、約868万人のフォロワーを持つ。批判を受け、同氏はウェイボーで2回、声明を発表した。

同氏は7日の声明で、日本国際交流基金のプロジェクトは日中両国の友好交流を推進するためにあり、自身は「オープンで普通の文化交流」に招かれたと強調した。また、同氏は8日の声明の中で、日本滞在中に国際交流基金から、毎月2万元(約34万円)ほどの生活費と研究費を受け取ったと明かし、「日本外務省からお金を受け取ったわけではない」とした。この声明で、同氏は「日本は第二次世界大戦で犯した罪に関して、いまだに謝罪していない。これは絶対に許してはいけない」と言及し、愛国主義者の機嫌を取ろうとした。

中国外務省の汪文斌報道官は9日の記者会見で、これまでの好戦的な「戦狼外交」をやめ、著名な知識人らが日本側の交流プロジェクトに参加したことに理解を示した。

汪報道官は「日中国交正常化から約半世紀において、日中双方の政府の支援の下で、数多くの交流が進められ、両国関係の発展に積極的に貢献した。今年、日本側との間で、『5年間で両国の青少年3万人の相互訪問』という交流計画も立てた」と話した。

汪氏の「火消し」に対して、ネット上では「これが正しい答え」「正常な交流は問題ない」と擁護する声がある一方、「健全な交流とは都合の良い言葉だ」「日本の動機は不純だ」との反発もある。

こうした過激なナショナリズムについて、ニューズウィーク9日付は、習近平氏が公約として掲げた中華民族の偉大なる復興という「中国の夢」の実現は、オンライン上の暴徒を生み出していると指摘し、「中国指導部を少しでも批判する者が現れると寄ってたかって吊し上げる輩だ」と切り捨てた。

アメとムチの見方も

いっぽう、台湾に亡命した中国民主活動家、龔与剣氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、中国当局のネット検閲と情報統制によって、「中国国民がネット上で目にする情報は、当局が見てほしいものばかりだ」と指摘した。蒋方舟氏に対する批判は、中国当局が裏で操っている可能性が大きいとした。

今月4日、日本政府から無償提供された英アストラゼネカ製の新型コロナウイルス・ワクチン124万回分を積んだ航空機が台湾に到着した。中国外務省の汪報道官は同日、「政治的パフォーマンス」と、日本と台湾を非難した。

中国外務省が日中交流に肯定的な姿勢を示す一方で、愛国主義者の批判を容認したことは、日本に対する中国当局の「アメとムチ」との見方も出ている。

(翻訳編集・張哲)