NZ2大政党、中国系議員2人を排除 ファイブ・アイズから圧力か

2021/06/03
更新: 2021/06/03

ニュージーランド(NZ)の二大政党である与党・労働党と野党・国民党は昨年の総選挙前、情報機関から警告を受け、2人の中国系議員を排除したと、政治ジャーナリストのリチャード・ハーマン(Richard Harman)氏が5月26日明かした。同氏は自身の解説サイト「ポリティック(Politik)」に掲載した記事で複数の関係筋の話として報じた。

それによると、労働党党首で現首相のジャシンダ・アーダーン氏と国民党のトッド・マラー党首(当時)が、情報機関から説明を受けた後、労働党のレイモンド・フオ(Raymond Huo、霍建強)議員と国民党のジャン・ヤン(Jian Yang、楊健)議員を排除することに合意した。それから2週間も経たないうちに、2人は昨年7月、「家庭の事情」を理由に政界からの引退を発表した。

同国メディアや国民は長い間、両氏が中国政府やその統一戦線工作部と密接な関係にあることを疑問視してきた。

中国の広域経済圏構想「一帯一路」に関するニュージーランド研究会の会長を務めるフオ氏は、競売にかけていた習近平国家主席の直筆サイン入り書籍『習近平が語る国家統治論』を、現地の中国人バイヤーに15万NZドル(約1200万円)で売却した。

中国共産党の軍事大学で教鞭をとり、スパイ養成に携わっていたヤン氏は、2019年に国民党幹部の代表団を率いて訪中し、中国の公安や司法部門を統括する共産党中央政法委員会トップの郭声琨書記と会談した。郭氏は中国共産党の秘密警察のトップである。

辞職前、フオ氏は労働党の議員を7年間、ヤン氏は国民党の議員を10年以上務めていた。両者とも選挙区から直接選出されたのではなく、ニュージーランドの小選挙区比例代表併用制(MMP)に基づく議席配分によって当選を果たした。

国会議員在任中、両氏は国会討論会でほとんど発言しなかったが、中国大使館や領事館、統一戦線工作部(中国共産党の海外浸透活動を統括する組織)とつながりのある親中派団体が主催するイベントには積極的に参加していた。

ニュージーランド政府は長年、対中融和路線を取っており、中国共産党の浸透活動に無関心だったと批判されてきた。しかし、この事件は、ニュージーランド政府が、英語圏5カ国の機密情報共有枠組み「ファイブ・アイズ」からの圧力を受けて、中国共産党のスパイ活動に重い腰をあげたとみられる。

マラー前国民党党首の政治顧問を務めていたマシュー・フートン(Matthew Hooton)氏は、5月28日付の地元紙ニュージーランド・ヘラルドへの寄稿で、2議員の離任は情報機関の介入によるものだとした。さらに、両党党首らは情報機関との会合で、2人の離任を「なるべく騒ぎにならないよう進めていきたい」との意向を示したと述べた。

ニュージーランドの華字メディア「新報」の編集長である陳維健(Chen Weijian)氏は、大紀元の取材に対し、「ニュージーランドの主要政党はいずれも、最大の貿易相手国である中国に依存しているため、親中姿勢を鮮明にしている」「フオ氏とヤン氏は長年、中国共産党とのつながりを隠さず活動していたが、両党の幹部に守られていたため、情報機関は彼らの活動を見て見ぬふりしていた」と指摘した。

「2人が辞任した本当の理由は、メディアの報道や世論の影響ではなく、中国共産党の代理人である2人の行動が、ニュージーランドの国家安全保障や、ニュージーランドの情報機関とファイブ・アイズの協力関係を著しく損なったからだ」とファイブ・アイズからの強い圧力を受けて当局が行動を起こした可能性が高い、と陳氏が分析した。

記者団から「この件について情報機関から説明を受けたか」との質問に対し、アーダーン首相は「肯定も否定もせず、一切コメントしない」と答えた。ジュディス・コリンズ国民党党首は報道各社からのコメント要請に応じていない。

(翻訳編集・王君宜)