中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会(CECC)は1月14日、2020年版の年次報告を発表した。報告は中国共産党政権が前例のない規模で検閲、脅迫、抑圧的な政策をとっており、特に新疆ウイグル自治区で、ジェノサイド(大量虐殺)の可能性もあると指摘した。
同委員会は、中国が世界貿易機関(WTO)加盟条件に則して中国市民が人権や自由を遵守しているかどうかを調べ、議会と大統領に報告することが義務付けられている。2000年の米中関係法により設置された。
今回の年次報告書は、2019年7月1日~2020年7月1日までの期間を対象としている。議長はジェームス・マガバーン下院議員(民主党)マルコ・ルビオ上院議員(共和党)が務める。
CECCは、中国共産党が人権侵害を世界中に拡大し、米国にまで及んでいることへの懸念を強め、幾つか事例を並べた。「評論家を脅迫する、中国共産党が好まないSNSコンテンツを削除する、出版社に中国国内と同様の検閲を迫る、学術機関に影響を与えて学問の自由を損なう、多国間機関に干渉する、米国や国際的な企業に圧力をかけて中国の政治的要求に沿わない慣行を弾圧する」など。
報告書には、欧州委員会の報告書「中国政府の権威主義によるロングアーム(訳注:広範囲にわたる影響力)」を参考に、中国政府の人権侵害について新たな章を設け、政策提言や勧告が盛り込まれた。
トランプ政権下で、CECCは香港人権・民主主義法、ウイグル人権政策法、チベット政策・支援法など中国の人権に関連する多くの下院・上院で法案や決議案を通過した。また、天安門事件や強制労働に関する公聴会も開き、迫害の経験者が証言を行なった。
議長のマガバーン下院議員は声明で「2020年、中国政府は中国の人権と法の支配を打ち砕くために衝撃的で前例のない行動をとった」とし、「米国は引き続き中国国民側に立ち、中国政府の人権侵害に団結して対応し、世界をリードしなければならない」と述べた。
共同議長のマルコ・ルビオ上院議員も声明で、CECCの年次報告書は中国共産党による中国国民への残忍な残虐を毎年記録しているとし、人間の尊厳に対する中国共産党の悪質な攻撃を解決するための行動を取らなければらないとした。
ジェノサイド認定を求める
CECCの報告書は、新疆ウイグル自治区における虐待についてジェノサイドの認定を検討するよう米国政府に求めている。「中国政府の文書を含む、大量の抑留収容所は党幹部の指示で設立された証拠がある」としている。
報告は、推定180万人のウイグル、カザフ、キルギスなどその他の少数民族が、超法規の収容施設に恣意的に拘留され、強制労働、拷問、政治教化を受けているとした。
昨年8月、大統領選挙中のバイデン陣営は、中国政府による新疆を含む少数民族に対する抑圧は「民族消滅」であると声明で述べた。「バイデン氏はこれを強く信じていて、(虐待に対して)反対の立場をとっている」
今年1月13日、米国土安全保障局(DHS)と税関国境保護局(CBP)は、中国人権弾圧に関連する措置を発表した。米当局は、新疆の企業や団体が生産するすべての綿花とトマト製品は、拘留されたウイグル族の強制労働によって作られたとみなしている。
新疆ウイグル自治区の状況のほか、香港の自由への侵害は報告のもう一つの焦点となっている。香港に関する章では「香港の一国二制度が破壊された」として、香港が長い間維持していた法の支配、人権、自由を著しく損なったと指摘した。ポンペオ国務長官は強調して、1997年に中国共産党政権へ移管された時に約束した「高度な自治」の維持を行わなかったと批判した。
中国政府は、昨年6月30日に香港版国家安全維持法を、香港の議会に当たる立法院の手続きを飛び越えて可決・施行した。
世界に伸びる中国共産党のロングアーム
373ページのCECCによる年次報告書では、中国の言論の侵害とインターネット検閲は、世界中に広がっていると指摘した。これは中国国外を拠点とする企業や学術機関、人権活動家個人に対し、中国共産党の都合にかなう言論に限定するよう強制的な方法をとっている。
最も多く見られる例として、中国市場および中国SNSにおける経済的な強制性、監視、世論工作、脅迫、検閲により、人権問題などの批判を抑制する。威圧的な態度をとることで、企業に「自己検閲」の実施を求めている。
一例として、NBAチームのヒューストンロケッツ幹部が香港民主主義抗議を支持するツイートをしたことで、NBAは中国市場における報復措置にあい、NBAは謝罪に追い込まれた。
報告は、ロングアームは国境を超え、中国人留学生、米国に住む少数民族、中国で経済活動を行う国際的な企業に影響が及ぶとしている。さらに中国本土では海外在住者の親戚を脅している。
懸念される事例20人 桂民海氏や人権弁護士、法輪功学習者ら
報告には「懸念される事例」として拘束されている20人の事例をあげた。彼らは、「国際的に認められた人権を平和的に行使したことを理由に、中国当局が拘禁したり判決を下した」人々だという。CECCは、米議員ら政府関係者が中国政府および共産党当局者と会合する場合、彼らを擁護する立場をとるよう勧めている。
これらの事例には、チベット、ウイグル、法輪功、キリスト教信者ら信条を理由に拘束された者や、また香港で民主主義関連書籍を扱う書店を営んでいた桂民海氏、1989年の六四天安門事件に関わるジャーナリスト・黄琦氏、人権弁護士・余文生氏や徐志勇氏、労働問題活動家らが含まれる。
(翻訳編集・佐渡道世)