フィンランド、香港との容疑者引渡しを停止 国安法で人権問題を懸念

2020/10/21
更新: 2020/10/21

フィンランド政府は香港と結んだ犯罪容疑者引き渡し条約を停止した。これは、オーストラリア、カナダ、英国、米国などの先例にならっている。現地紙ヘルシンギン・サノマットが報じた。

サウリ・ニーニスト(Sauli Niinisto)大統領は、フィンランドと中国特別行政区である香港の間で締結された身柄引き渡し条約を停止するとの司法相の提案を承認した。

この決定は、6月末に中国共産党が施行した、香港版の国家安全維持法(以下、国安法)に関連する。同法により、香港当局は「国家の安全」を理由に「分離主義」「転覆」「外国との共謀」などの容疑で広範囲に渡り人々を取り締まることが可能になった。すでに数十人が同法に基づいて逮捕され、数人の野党議員や民主活動家が香港から脱出した。

中国は、駐フィンランド中国大使館のウェブサイト上で、「中国とフィンランドの関係に悪影響を及ぼさないよう、香港問題や中国の内政に干渉しないよう要請する」との声明を発表し、フィンランドの決定に不満を示した。

中国共産党は国安法を理由に、海外在住の民主化活動家6人に対する逮捕状を発行している。もし、海外当局が中国に協力して対象者が中国本土に送還されれば、有罪判決を受けて収監される可能性が高い。共産党体制の中国は司法が独立しておらず、党の意向で処遇が決まる。

欧州連合(EU)は国安法について正式に「重大な懸念」を表明し、同法は香港の「一国二制度の原則の下での高度な自治」を弱体化させると非難している。

8月、香港から台湾へ密航しようとして中国海警局に拘束された香港の民主活動家ら12人は、2カ月あまり深センの拘留施設にいる。一時は行方がわからなくなっていた。12人は、16~33歳の男女で、香港での民主抗議活動に加わり、逮捕や起訴された若者たちだ。家族は記者会見や街頭活動を通じて、釈放のために国際社会の協力が必要だと訴えている。

(翻訳編集・佐渡道世)