中国共産党は10月2日、王岐山国家副主席の側近だった董宏・前組長(66)を「重大な法律と党規違反」の疑いで調査していると発表した。同氏は、党中央規律検査委員会のトップを務めた王岐山氏の下で、党中央巡視組の責任者として、幹部の汚職行為を摘発していた。
董氏は、王岐山氏が1998年広東省副省長に赴任した時、同省政府発展研究センターの副主任だった。2000年以降、董氏が王氏の部下として、国務院経済体制改革弁公室、海南省党委員会、北京市政府などで要職を務めた。
王岐山氏が2012年、最高指導部である党中央政治局常務委員に選出され、党中央規律検査委員会書記に起用された後、董宏氏は15年2月から、党中央巡視組の副組長や組長、党中央弁公庁調査研究室5組の組長などを歴任した。王氏が中国各地を視察した際、董氏は常に同行していた。
香港や海外中国語メディアは、王岐山氏の「側近中の側近」が失脚したことに大きく注目した。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、習近平氏は、反腐敗運動で自らの政敵を次々と失脚させた王岐山氏との間で、当時の盟友関係から対立関係に変わった可能性があると示した。9月下旬、王岐山氏の友人で実業家の任志強氏が、習近平氏を批判し、有罪判決を受けて懲役18年を言い渡された。このことについて、一部の専門家は、習氏と王氏が決別したとの見方をした。
香港紙・蘋果日報は、時事評論家である林和立氏の話を引用し、中国当局が董宏氏を摘発した真の狙いは王岐山氏にあるとの認識を示した。
任志強氏の父、任泉生氏は中国商務部副部長(副経済相に相当)だったため、任氏はいわゆる「紅二代」の一員である。同氏が懲役18年を言い渡されたことは、習当局に不満を持つ紅二代への見せしめであるとみられる。
一方、王岐山氏は姚依林・元常務副総理の娘と結婚し、同じく紅二代のグループに入っている。このため、王氏は紅二代と結び付きが強く、紅二代の間で強い影響力を持つ。また、董宏氏は、王岐山氏の部下になる前、薄一波・元財政部長(財務相に相当)の秘書を務めたことがあり、薄氏一家などの紅二代と近い関係にある。
林和立氏は、習近平氏が「自分より敏腕を振るった王岐山氏を警戒している」と指摘した。董氏の失脚は、党内における王岐山氏の勢力や影響力を弱体化させたいという習近平氏の意図があるとの見解を示した。林氏は、中国共産党内の権力闘争は「非常に残酷だ。毛沢東と劉少奇の例をみればわかる」とした。
中国当局は今年2月、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染者が初めて確認された湖北省トップ、蒋超良・省党委員会書記(63)を解任した。蒋氏も王岐山氏の部下だった。当局は2月以降、蒋氏の消息を明らかにしていない。
(翻訳編集・張哲)
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