大手学術誌が中国寄りの政治検閲 台湾医師に中国表記を要請

2020/08/28
更新: 2020/08/28

中国共産党は国際的な組織を通じて台湾に圧力をかけている。各国の国際線を持つ航空会社に「台湾」表記を国扱いしないよう要求したり、世界保健機構(WHO)の総会への出席を妨害した。最近では、英字医学誌に研究論文を投稿した台湾医師チームは、出版社から国籍を「中国台湾」にしなければ掲載しないとの通知を受け取った。

ラジオ・フリー・アジアが伝えた。台湾の呉若玄医師とチームはこのほど、網膜症に関する論文を、英独の国際的な学術出版社「シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)」の医学雑誌「アイアンドビジョン(Eye and Vision)」を投稿した。

呉医師によると8月24日、同誌編集者からの「中国ポリシーに準拠するため、論文著者の国籍・台湾の後に中国を追加しないと、論文は掲載できない」という返事を受け取ったという。

呉医師がフェイスブックで公表した出版社からの連絡。同社は、台湾のあとに中国を表記しなければ論文は掲載することができないと通知している(呉医師フェイスブックのスクリーンショット)

呉医師は、医学論文が政治的な検閲に遭ったとして、自身のフェイスブックにも「政治的な問題はどこにでも起こりうる。学術界も例外ではなくなった」との嘆きのコメントを書き込んだ。

26日、呉医師は「私とチームは、論文を別の学術誌に投稿することを決めた」とフェイスブック上でメッセージを残し、思いを寄せた多くの人々に対して感謝の意を伝えた。

国際的な出版社シュプリンガー・ネイチャー社は英独が2015年に創設した。同社が出版している学術誌「アイアンドビジョン」は、実は中国温州医科大学が所有している。

温州医科大学付属の眼科病院のウェブサイトによると「Eye and Vision」は同大学が主催し、同大付属の眼科病院の院長である瞿佳氏が編集担当する国際的な英語学術雑誌と説明している。

同誌は中国科協、財政部、教育部、中国科学院、中国工学院、および国家報道出版ラジオテレビ総局などの組織が主催および実施した「中国科学技術定期刊行物の国際的影響力強化プロジェクト」の下で、中国における「雑誌の国際化への道を開く」ことを目的として設立された。

シュプリンガー・ネイチャー社は世界最大規模の学術書籍出版社。それぞれ19世紀に創業した出版社ネイチャー社とシュプリンガー社、マクミラン社が2015年5月に出資して設立した。同社は「ネイチャー(Nature)」や「サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)」を含む3000以上の専門誌ブランドを発行管理している。

いっぽう、同社が検閲で中国共産党を支援したのは今回が初めてではない。同社は2017年11月、中国共産党政権の要請により、同社が運営する中国専門サイトから台湾、チベット、人権、中国高層政治に関する数百の論文を取り下げた。学界から「言論の検閲」との批判を浴びた。

近年、「中国の技術と文化のグローバル化」を宣伝する中国共産党は、海外の出版社との提携や買収を行い、国際的な学術空間に徐々に侵食している。米シンクタンク「プロジェクト2049研究所(Project 2049 Institute)」のジェシカ・ドラム(Jessica Drun)客座研究員は「これは台湾だけの問題ではない。中国共産党が自身の利益のための観点と一致させる見方を形成させている。このことは中国共産党による『世界覇権物語』の中の1ページだ」とRFAの取材に答えた。

同氏はまた、「科学界へ進出した中国共産党の政治検閲の代償は、台湾の学者が学術界に貢献することを妨げるだけでなく、世界中の人々の健康にも影響を与えている」と述べた。

(大紀元日本語ウェブチーム)

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