中国天津市第2中級人民法院(地裁)は8月11日、収賄・汚職・重婚などの罪で起訴されている国有不良債権処理大手、中国華融資産管理股份有限公司(以下は中国華融)の頼小民・元会長(58)の公判を開いた。当局は、頼被告が約18億元(約276億円)の賄賂を受け取ったとした。収賄額として、これまでの最高額だとみられる。
検察側は、頼被告が2008~18年にかけて、中国金融当局である中国銀行業監督管理委員会弁公庁主任、中国華融の会長兼党委員会書記などの職権を利用して、関連金融企業や個人から不正に金品を受け取ったとした。金額に換算すると、総額17億8800万元(約274億5300万円)余りだ。
頼被告は同日の公判で罪を認めた。頼に対する判決は後日に言い渡される。
中国メディア「財新網」などは、頼被告の収賄額は当局に起訴・収監された汚職官僚の中で最多で、「新記録となった」とした。
財新網は、頼被告は「100件余りの住宅物件を持ち、100人以上の愛人がいる」などと批判した。捜査員が頼被告の自宅から2億7000万元(約41億4600万円)の現金を押収した。これも、腐敗で取り締まられた官僚の中で最高額という。
昨年1月、国営中央テレビ放送(CCTV)は、習近平当局による反腐敗キャンペーンに関するドキュメンタリー番組を放送した。この中で、頼小民被告は当局の摘発を避けるために、贈賄側に現金を渡すよう要求した。受け取った現金は専用の場所に保管した。頼被告らはこの場所を「スーパーマーケット」と呼んでいた。中国当局の発表では、現金のほかに、外国高級車や高級腕時計、絵画、黄金なども受け取った。
江蘇省蘇州市民の潘露さんは11日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、頼被告の収賄額は、中国最高指導部メンバーとその家族らが受け取った金額と比べて「まだ少ないのではないか」と指摘した。「頼小民被告を摘発したことで、われわれ国民は、中国共産党中央が腐敗を撲滅できると勘違いしてはいけない」との見方を示した。
在米中国人学者の呉祚来氏は、「共産党の支配の下で、腐敗と経済発展は強く結びついている」と指摘した。呉氏によると、地方政府が地元経済を振興していくためには、中央政府の役人にアピールし続けなければならない。一部の中央政府の幹部らは地方の役人に金品を要求している。また、一部では、中央政府の幹部への贈賄が暗黙のルールになっている。
頼小民被告はCCTVの反腐敗キャンペーン番組で、「私は党委員会書記、会長と法人代表を務めているから、(中国華融の)規律検査委員会書記は、社内党委員会の委員で、私の部下にあたる。だから、実際のところ、彼は私を監督できないのだ」と話し、中国官僚体制が原因で自身が汚職に走ったと示唆した。
呉氏は「中国の党中央から各地までにある規律検査委員会は、党総書記や各省・市などの党委員会書記を監督管理するのではなく、党委員会書記より下級の幹部や党員を監督する組織だ。この体制では必ず、腐敗が生じる」とした。
(翻訳編集・張哲)
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