中国のインターネット大手アリババ傘下の子会社UCウェブで働くインド人元従業員は、同社の検閲や虚偽情報の拡散に異議を申し立てたところ、不当解雇されたとして、創業者の馬雲(ジャック・マー)氏らを訴えた。インドの裁判所はこの元従業員の提訴を受けて、馬氏らに出廷するよう召喚状を出した。
インドの首都ニューデリーのグルグラム(グルガオン)地方裁判所の判事は7月26日、馬氏を含むアリババとその会社幹部十数人に対して、召喚状を出した。また、30日以内に書面による回答を提出するよう求めた。
7月20日付の民事訴状によれば、UCウェブの元従業員プシパンドラ・パルマー(Pushpandra Singh Parmar)氏は、同社は中国にとって好ましくないコンテンツを検閲し、同社の提供するアプリ「UC Browser」と「UC News」は、社会的・政治的な不安につながるような虚偽の情報を表示していたと主張している。
訴状によると、パルマー氏は2017年10月まで、UCウェブのインド事務所副所長を務めていたという。同氏は26万8000ドルの賠償金を求めている。
パルマー氏は、200ページ以上に及ぶ法廷提出書類の中で、アリババのアプリ「UCニュース」に掲載された疑惑のニュースのスクリーンショットを提出した。 たとえば、2017年には「2000ルピー紙幣は今晩中に使用できなくなる」、2018年のニュースでは「速報・インドとパキスタンの間で戦争が勃発した」などがあった。
今年6月に起きた中国とインドの国境での衝突を受けて、インドでは中国製品のボイコットが行われている。インドの電子情報技術省は6月29日、セキュリティ上の懸念を理由に、アリババの運営するアプリ「UCニュース」や「UCブラウザ」のほか、「TikTok」や「WeChat」「Weibo」など59の中国製アプリを禁止すると発表した。
禁止前、「UCブラウザ」はインドで少なくとも6億8900万回ダウンロードされ、UCニュースは7980万回ダウンロードされている。データ調査会社Sensor Towerによると、これらは、2017~18年の間で最もダウンロードされたアプリだという。
インド当局は、中国製アプリやソフトウェアの禁止は、これらの情報ツールがインドの主権を脅かしているとの「信憑性のある」情報を入手したこと、また、市民のデータや公の秩序を守るための措置だとしている。
ロイター通信によると、インド当局が中国製アプリを禁止にしてから、同国内のアリババのUCウェブはインドでの従業員の解雇を始めた。
アリババのUCニュースは声明の中で、同社は「インド市場と現地従業員の福利厚生に取り組んでおり、現地の法律を順守している」として、不当解雇との訴えを退けたい意向を示した。また「現在進行中の訴訟についてはコメントできない」と述べている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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