中パ経済回廊、中国企業が建設費用水増し請求 30億ドル規模=報告書

2020/06/02
更新: 2020/06/02

中国政府が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の目玉の1つ、「中パ経済回廊」(CPEC)計画は、中国の融資や契約内容の不透明さで窮地に立たされている。パキスタンのイムラン・カーン首相が国民に高額な電気代を支払わせた問題を調査するために発足した監査委員会は、中国企業の略奪行為を非難した。

620億ドル(約6兆6400億円)規模の同プロジェクトは当初は、港湾や道路の整備、パイプライン、数十カ所の生産施設、パキスタン国内最大規模の空港などを建設する目標を掲げた。

米外交誌「ザ・ディプロマット」(The Diplomat)の5月18日報道によると、同プロジェクトの建設を請け負った華能山東如意電力会社(HSR)サヒワル石炭火力発電所(Sahiwal coal-fired power project)と電力会社ポート・カシム(Port Qasim Electric Power Company Limited、PQEPCL)が建設費用を水増し、過大請求などの問題が発覚した。

パキスタン政府は中国と「鉄の友情」で結ばれたと国民にアピールしてきた。しかし、中国の会社はパキスタンから利益を巻き上げたとき、少しも手加減しなかった。

「電力セクター監査委員会」は278ページの報告書をまとめた。独立系電気セクターだけでも6.25億ドルの損失を算出し、少なくとも三分の一の損失は中国系企業が請け負ったプロジェクトに関わっていると結論付けた。

パキスタン政権を主導するパキスタン軍はCPECプロジェクトに深く関与している。同プロジェクトのトップである軍幹部のジャバン・アシム・サリム・バジワ氏は情報放送相(SAPM)の特別補佐官も務め、軍メディア部門である軍統合広報局(ISPR)の局長をも兼任している。

報告書によると、関連プロジェクトのセットアップコストが高すぎたという。例えば、中国企業が請け負った2カ所の火力発電所とも、ミスによって「建設中の利子」がコストとして計算され、早期竣工の可能性も考慮しなかったため、建設費用は大幅に増加、2.04億ドルにものぼった。

契約書に記載された工期は48カ月、つまり48カ月分の利息を支払わなければいけないが、実際には27~29カ月で完成した。18億ドルも無駄になった。

パキスタンの専門チームがこの2つの火力発電所プロジェクトの建設費用を審査したところ、30億ドルも水増しされていたと発覚した。

水増し部分は中国山東省の電力会社に23億ドル、PQEPCL社に6.72億ドルがそれぞれ支払われた。

調査委員会は、華能山東如意電力会社とPQEPCLから2.04億ドルのコストカット、利息計算の修正および関税の調整を提案した。

また、ただ2年で、華能山東如意電力会社はすでに初期投資の約72%を回収し、PQEPCL社も運営開始初年度に投資総額の約32%回収したという。

報告書は、620億ドル規模の同プロジェクトから中国企業が暴利を得たことが誰にも気付かれなかったとは考えられないとし、会社内部やパキスタン協力会社の油断か意図的に見過ごされた可能性もあると分析した。

スリランカ政府とモルディブ政府の経験から、これらの過剰支払いはパキスタン政府指導者の共謀と関係者の汚職によるものだと報告書は示唆した。

パキスタン経済はしばらくの間、破産の危機に瀕しており、中共ウイルス(COVID-19)のパンデミックが状況をさらに悪化させた。

パキスタン政府は、自国の政策を改革する代わりに、パンデミックを理由に債務の再編成と放棄を求めた。

報告書は、国際社会がパキスタンを経済危機から救い出すことに期待するのは非現実的だと指摘した。「膨大な軍事支出、根深い汚職、説明責任の欠如が、収支格差を拡大させている」

今、中国の投資が新たな負債となっているようだ。国際通貨基金(IMF)は、パキスタン当局者に増税と電力関税の引き上げを迫り、事実上、中国の横暴な行為のツケをパキスタン国民に払うよう求めている。

報告書は欧米の金融機関は、パキスタンの支配層や中国の略奪行為に手を貸すべきではないとし、「パキスタンの人々は、より良いものを得るに値する」と述べた。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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