台湾の総統選投票を1月11日に控えるなか、欧米メディアは中国当局による選挙への介入や偽情報の拡散に注目している。米上院議員はこのほど、中国当局の影響力に強い懸念を示し、「今後(台湾への)嫌がらせの扉が多く開かれるだけだ」とした。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が8日伝えた。
リック・スコット上院議員(共和党)は6日、ツイッターで「台湾の選挙は、この地域で人権と自由のために戦い続けることに非常に重要な意味を持つ。共産主義の中国当局の影響力の拡大を許せば、弾圧の扉が開かれるだけだ。香港と台湾の人々とともに立ち上がろう」とのコメントを書き込んだ。議員は今まで、香港の抗議活動を支持するコメントを複数回投稿した。
米メディアのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やニューヨーク・タイムズ、英紙タイムズとガーディアンなど欧米主要メディアはこのほど、中国共産党政権の浸透工作を阻止する台湾の「反浸透法」の可決に焦点を当て、報道を行っている。
スウェーデンのヨーテボリ大学(University of Gothenburg)V-Dem研究所(Varieties of Democracy Institute)が発表した2019年度民主主義報告書では、外国政府がソーシャルメディアを通じて流した重要な政治的虚偽情報による被害を受けた国の中で、台湾はラトビアとバーレーンに並んで最悪となった。
ソーシャルメディア世界大手、フェイスブックの担当者も、米メディア「テッククランチ(TechCrunch)」に対して、3年前から同社は「台湾の総統選に関する情報を含めて」、悪意のある情報の排除に最大限の努力を払ってきたと話した。同担当者によると、フェイスブックは、偽アカウントの削除、フェイク情報の拡散の阻止、さらに政治広告の透明性の向上に取り込んでいる。「われわれは、台湾の選挙に関して専門家のチームを構成した。フェイスブックが民主的な選挙において良い役割を果たすことを保障したい」と話した。
また、ツイッターも6日、台湾総統選挙の投票が公正に行われるための対応措置を公表した。ツイッターは、台湾の中央選挙委員会、司法当局、民進党と国民党との緊密な連携を取っていると強調した。
米シンクタンク、グローバル台湾研究センターの訪問学者であった陳方隅氏は、「そもそもソーシャルメディア大手会社は偽情報の流布を防ぐことに責任がある」「以前このような対策は少なかった。台湾の選挙はそのきっかけに過ぎない」との見方を示した。
陳氏は、虚偽の情報の影響で台湾政府はすでに「メディア対応に神経を使い、政策の議論を後回しにしている」状況だと指摘した。
台湾立法院(国会)が昨年12月31日に可決した「反浸透法」について、インターネット上では偽の情報が流れた。「例えば、(海の女神である)媽祖様を祀る台中交流イベントへの出席は違法行為だという情報がある。明らかに嘘だ」
反浸透法は、「敵対勢力」からの指示、委託、資金援助を受けてはいけないと規定。また、これらを受けて台湾の選挙運動や政治献金などに関わった場合、1000万台湾ドル(約3600万円)以下の罰金や5年以下の懲役などを科す。
中国政策を担う台湾行政院(内閣)大陸委員会は、反浸透法の立法について「海外敵対勢力による台湾の民主主義社会システムへの介入を防ぐためだ」との見方を示した。また、反浸透法は「中国と台湾の交流が阻まれる可能性がある」との指摘について、大陸委員会は「誤解である」と反論し、「同法によって中国と台湾の安定した交流が保たれる」と強調した。
1月11日、台湾では第15代正副総統選挙と同時に、第10期立法委員(国会議員)選挙も行われる。
(翻訳編集・張哲)
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