台湾と断交して中国と国交を結んだ南太平洋の島国・ソロモン諸島のソガバレ首相は、中国系企業の幹部を含む32人の代表団と北京を訪問している。野党代表らは、中国の影響力拡大を危惧している。
中国外交部(外務省)によると、今回が初訪中となるソガバレ首相は10月8~13日までの滞在期間中、中国政府と経済、教育、技術、外交など多数の協定に署名する予定。北京で開催されている国際農業展示会閉幕式に参加する。
現地紙ソロモン・スター10月7日付によれば、32人の訪中団は民間および国営の企業代表11人、5閣僚を含む9人の政治家やメディアの代表からなる。参加企業には中華系の姓を持つ代表者が率いる4企業が含まれる。
ソロモン諸島の野党代表マシュー・ウォール議員は同紙に対して、訪中団に中華系の代表者が率いる企業が含まれていることから、ソロモン諸島の経済は「中国に支配されていることが、あらためて分かった」と述べ、今後の中国の影響力拡大を「島民として強く危惧する」と述べた。
ソロモン諸島には、少なくとも十数年前から反中感情がくすぶっている。2006年4月、中国からの賄賂を受けた不正選挙との報道を受けて、首都ホニアラにあった中国人商店が並ぶチャイナタウンの店舗9割を破壊する暴動が発生した。それ以後も、小規模な騒動が起きている。
当時の英BBCの報道によると、市民の不満は、倫理が欠如した取引と腐敗政治にある。中国からのビジネスマンが「裏口」からビザあるいはパスポートを入手したり、不動産や土地を購入したりすることが多発しており、中国企業で働く現地労働者は劣悪な労働環境に置かれているという。
2018年、現地紙アイランドサンは、中華系の人物が代表を務める民間企業JQYには、公的補助金が過去7年で約2億3900万米ドル以上が使われており、「巨額な補助金にもかかわらず、サービスや製品など使用方法が不透明だ」と批判した。世界銀行によると、同国の2017年国内総生産(GDP)は13億米ドル。
同紙によると、この補助金は、ソロモン諸島政府および台湾政府が設立した「開発基金」から出ており、地方省大臣が交付を決定していた。JQYのサービスは、2006年の暴動以後、新たに再建されたニュー・チャイナタウンの需要に合わせて提供されているとも伝えている。
2016年、蔡英文総統就任以降、中国共産党からの国際的な圧力が一層強まり、台湾が外交関係を持つ国は15カ国に減った。近年、太平洋諸国ではソロモン諸島、キリバスが断交を決めた。ブルームバーグによると、オーストラリアのシンクタンクであるローウィー研究所で太平洋諸国の事情を調べるジョナサン・プライク氏は、最近政権が交代したツバルとナウルも「小さな国で外圧に弱い」と、台湾との外交維持が危ぶまれると指摘する。
南太平洋では、中国軍の軍事施設設置の情報が流れるようになっている。台湾外交部(外務省)呉釗燮部長は10月7日、台北で開かれた太平洋諸国との協力に関するフォーラムで、中国はソロモン諸島、キリバスで軍事施設の設置に関心があるとの報告を認知していると述べた。このほかにも、豪州メディアは、バヌアツは中国軍基地設置を検討していると報道した。報道内容を両国は否定している。
呉外相は、中国が人工島を建造し軍事拠点を作る南シナ海にたとえて「誰もが南太平洋が、南シナ海のように変わることは見たくないだろう」と述べた。「長期的な戦略的観点から、太平洋が自由で開かれたものであり続けるかどうか、主要な参加者が国際秩序に従うかどうか、志を同じくする友人は真剣に考えてほしい」と呼び掛けた。
この太平洋諸国フォーラムに参加した外交官のなかには、米国国務省の豪州・ニュージーランド・太平洋諸国担当次官補サンドラ・オードカーク氏が含まれる。これは、米国による台湾支援の強化を意味すると考えられる。
(翻訳編集・佐渡道世)
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