メキシコ海軍は同国のラサロ・カルデナス港で、中国の上海発デンマーク籍のコンテナ船から、25トンのフェンタニル粉末を発見し、押収した。末端価格は750億円相当に及ぶ。米麻薬取締局はSNSで「中国は引き続き米国に毒を送り続けている」と警告を発した。
メキシコの報道によると、同国海軍は8月24日に西部ミチョアカン州の港湾で荷揚げされた上海発の40フィートのコンテナ船を調査した。地元メディアによると、メキシコ当局は「塩化カルシウム」と説明付けられた袋からフェンタニル粉末を発見。合計931袋25.75トンを押収した。この粉末は数千万粒の錠剤の製造量に値する。
この事案を受けて、米麻薬取締局は8月24日、SNSで「トランプ大統領は正しかった。中国は毒を私たちのコミュニティに送り続けている。25トンもの中国製フェンタニルがメキシコの最大港湾で押収された。最終的な目的地は米国だ」と書き込んだ。
.@realdonaldtrump was right.
China continues to pour poison into our communities.
More than 23,000 kilograms of Chinese fentanyl seized at Mexico’s largest seaport.
FINAL DESTINATION: USA. https://t.co/6n0LVeWRKH
— ONDCP (@ONDCP) August 24, 2019
フェンタニルは、50年前にガン患者の痛みを鎮静化するために認可された医療用鎮痛剤。モルヒネよりも50~100倍の鎮痛効果があるとされる。中毒性が高く、ヘロインよりも安値で、少量でも高揚感が得られるため、爆発的に流行している。近年、米国では、中国で製造された安価なフェンタニルが密輸やインターネットを通じて多く流通し、過剰摂取による死亡者数が増加している。
米疾病対策センターによると、2014年フェンタニルに起因する死亡者数は4000人だったが、2017年は7万2000人と約18倍に増加した。
複数の米当局者は、違法なフェンタニルの主な供給源は中国だと指摘しており、メキシコ国境を越えて運ばれるフェンタニルも大半が中国産とみている。メキシコやカナダの犯罪集団が、合成鎮痛剤やその原料を中国の業者から買い付け、米国に密輸している。米国における中国産フェンタニルの流行は、中国による対米「アヘン戦争」と例えられている。
国境がメキシコに面するアリゾナ州の法執行機関と、フェニックス麻薬取締局(DEA)現地事務所は、違法に製造されたフェンタニル錠剤の押収数は2019年、113万錠と発表した。2018年は38万錠であり、ほぼ3倍に増加した。2016年は2万錠で、わずか数年で50倍以上の量が摘発された。
フェンタニルによる弊害は過剰摂取による死亡のみならず、中毒になることで労働人口(青年期~壮年期)の活動能力、若年層ならば学習能力の低下が引き起こされる。このため、トランプ大統領は2017年10月、鎮痛剤蔓延により「公衆衛生上の非常事態宣言」を発表し、対策を取ってきた。
ブルームバーグは2018年6月、20カ国以上、100人以上もの麻薬密売人と繋がり、世界中にフェンタニルを販売していた顔暁兵が、米麻薬取締局に起訴されたと報じた。顔は中国武漢で、自作のフェンタニルなど薬物利用のための鎮痛剤を2つの化学工業で、年間数トン単位で製造していた。この件で、中国でおとり捜査したミシシッピ州捜査当局者によると、1キロ4000ドルでフェンタニルを購入できたという。これは、米国で錠剤として販売すれば最高3000万ドルにもなる。ヘロインなど他の違法薬物とは桁違いの収益性が蔓延を助長させ、米国の死亡者を急増させた。
トランプ大統領はまた2018年12月、米中首脳会談で中国の習近平国家主席に規制強化を求めた。ホワイトハウスによると、中国は、米国にフェンタニルを輸出する行為を中国国内法で最高刑の対象にすることで同意した。
2019年4月1日、中国の公安部、国家衛生健康委員会、国家食品薬品監督管理局は、「フェンタニル類物質を『非薬用類麻酔薬品および精神薬品規制品増補リスト』追加に関する公告」を共同で発表した。同日の記者会見で劉躍進・国家禁毒委員会副主任は「中国政府が正式にフェンタニル類物質を全面的に規制したことを表す」と述べた。
しかし、劉躍進氏は9月3日の記者会見で、フェンタニル密輸撲滅における米中の協力は「限定的」であり、中国国家禁毒委員会が5月の管理強化以降、1件も密輸を認知していないと述べた。
(翻訳編集・佐渡道世)
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