ドイツ南部バイエルン州で7月25日、世界のデジタル化とグローバリゼーションに関する経済セミナーが開かれた。登壇者が、中国がデジタル化の広がる世界の覇権を握ることの脅威について語ったところ、出席していた駐独中国大使と一団は突然、予定を繰り上げて離席した。
ドイツ商工会議所(IHK Schwaben)が主催するセミナーには、中国の通信機器大手華為技術(ファーウェイ)ドイツ支社幹部ウォルター・ハース(Walter Haas)氏、ドイツのソフトウェアメーカーXITASO社長ウルリッチ・ヒューゲンバーガー(Ulrich Huggenberger)氏、ドイツ最有力紙・南ドイツ新聞の上級記者で、北京に駐在経験のあるカイ・ストリットマター(Kai Strittmatter)氏が招かれた。
ドイチェベレ7月26日付によると、「デジタル化はグローバリゼーションに遭遇する―世界の権力は中国?」のテーマに、カイ記者は中国政治システムを激しく批判した。記者は、中国の言論の自由が強く制限されており、人々の監視も厳しくなっていると語った。
さらにカイ記者は、中国の現在の政治は、毛沢東時代に後退していると表現し、唯一の違いは、統治手段にハイテクとデジタルが加わったことだと述べた。さらに、ヨーロッパで広がる「融和的なデジタル・シルクロードから脱却」するよう提言し、中国の政治圧力に対する懸念のレベルを引き上げるよう求めた。
同記者の登壇を受けて、セミナー会場の最前列に座っていた駐ドイツ中国大使・呉ケン氏と、約10人の大使館職員は、予定されていた登壇者同士のセッションに参加せず、途中で突然、退席した。現地アウクスブルクの報道によると、中国大使とその側近が退場する際、ドイツ商工会議所の職員が慌てて大使らの見送りをして、贈り物を渡したという。
類似のセミナーが、ドイツ商工会議所シュヴァーベン支部の夏季大会でも開かれ、双方のにらみ合いがあった。カイ記者が登壇する前に呉大使はスピーチし、世界の自由貿易とデジタル化プロセスに焦点を当て、西側諸国における一部の中国忌避を批判した。
商工会議所のアンドレアス・コプトン(Andreas Kopton)議長は、アウクスブルク報告を受けた後、予定されていたセッションに参加せず退席したことや、政治的なスピーチが展開されたことについて「事前の合意に違反している」として遺憾の意を表明した。
しかし、カイ記者は、商工会議所と「政治的な話題について話さない」とは合意しておらず、「そのような条件がある場合、私は招待を受け入れないだろう」と反論した。
ドイチェベレが報じたイベントの参加者によると、カイ氏は、批判的な観点から、デジタル化、グローバリゼーション、中国の台頭、そして中国での長年の経験と組み合わせて、今日の活動のテーマに沿って語っていたという。
カイ記者自身は、「政治を伴わずにこれらの3つのトピックについて出来るだろうか?政治を議論することなく中国について話すことなどできない。中国は、政治指導者たちが経済を支配できるからだ」と強調した。
カイ記者は最近出版した自著『蘇る独裁(Reinventing Autocracy)』のなかで、権威主義的な独裁政権である中国共産党が、その統治能力を強化するためにデジタルテクノロジーを駆使していることについて、西側諸国はもっと警戒するべきであると主張した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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