米豪で中国人留学生の逮捕相次ぐ 出身大学は「スパイ養成機関」との指摘

2019/02/14
更新: 2019/02/14

米国とオーストラリアではこのほど、中国人2人がスパイ活動を行ったとして、両国の司法当局に逮捕・起訴された。2人は、中国山西省太原市にある軍事関連の大学、中北大学の在校生と卒業生だ。専門家は、中北大学は情報工作員の育成機関だと指摘した。

米の軍事施設を盗撮

米国フロリダ州の裁判所での公判で今月5日、中国籍の趙干利(20)は米軍事施設での盗撮を認め、懲役1年の有罪判決を受けた。

米紙マイアミ・ヘラルド5日付によると、趙は昨年、夏休み期間中の短期交換留学プログラムで米に入国した。同年9月、留学プログラムが終了直後、趙は帰国することなく、フロリダ州のキーウェスト米海軍航空基地に直行した。

趙は同年9月26日、同軍事基地に侵入し、デジタルカメラやスマートフォンで、基地内の建物やアンテナなどを撮影した後、不法侵入として地元警察に逮捕された。逮捕時、趙の留学ビザはすでに期限切れになっていた。

キーウェスト海軍航空基地は、中南米およびカリブ海域における軍事関連活動を担当する米南方軍(Joint InterAgency Task Force-South)の指揮センターだ。

趙は観光中、道に迷い誤って基地に入ったと主張してきた。米連邦捜査局(FBI)は起訴状で、趙は基地の外側に立てられた「軍事施設への立ち入り禁止」の看板を無視し、意図的に基地に侵入したとした。

また、米メディア、ワシントン・フリー・ビーコンの報道によれば、米政府の捜査員は、趙が米軍基地に侵入する前、米国に潜伏している中国情報機関工作員と連絡を取っていた、と述べた。趙は、自身について中国軍高級幹部家庭の出身だと認めているという。

裁判所に提出された捜査報告書では、趙は中国国内で軍事訓練を受けたにもかかわらず、留学ビザを申請する際、軍務経験について申告しなかったと指摘された。

ワシントン・フリー・ビーコンは、趙が所属する中北大学に注目した。

同大学は中国の国防科学技術工業委員会の管轄を受ける。前身は、1941年中国共産党軍、「八路軍」が創設した兵工学校、「太行工業学校」だ。

豪で産業スパイ活動

いっぽう、オーストラリアで中国籍の鄭毅(Zheng Yi 音訳、28)は、同国金融最大手AMPでの勤務中、商業機密情報を盗んだとして逮捕・起訴された。

7日シドニーの裁判所で行われた公判で、鄭は容疑を認めた。裁判所は3月に判決を言い渡す予定。

豪警察当局は今年1月、空港で豪を出国しようとする鄭を逮捕した。警察当局は、昨年10月ごろ、鄭がAMP社内のパソコンシステムから、パスポートや運転免許証などを含む顧客20人の個人情報をダウンロードし、鄭個人の電子メールボックスに送信したと指摘した。警察当局はAMPからの通報を受けて、昨年12月から捜査を開始した。

スパイ養成機関の中北大学

在米中国問題評論家の秦鵬氏はソーシャルメディアで、鄭毅は中北大学の卒業生だと書き込んだ。これによって、中国人ネットユーザーの間で、中北大学への関心が高まった。

現在米国在住の中国海軍司令部元参謀の姚誠氏(中佐階級)は13日、米ラジオ・フリー・アジアに対して、「趙干利の行動はスパイ行為に違いない」と述べた。「任務を遂行するために撮影したのだろう。一般人なら、リスクを冒してまで米軍事基地に入ろうとは思わないからだ」

姚誠氏は、1992年に中国軍で人員削減が行われ、一部の軍校は民間大学へ看板替えしたと話した。「中身はスパイ育成学校だ。このような学校は毎年増えている。主に海外の軍事技術窃盗のために工作員を育成している」

姚氏は過去、四川省重慶市にある秘密学校でスパイ訓練を受けた。

「中国情報機関は大きく6つの部門に分けられる。中国共産党中央対外連絡部が情報機関全体を統括している。6つの部門のうち、軍の情報機関は、総政治局連絡部(現在は中央軍事委員会政治工作部連絡局)、総参謀部第二部だ。他に国家安全部や公安部の情報機関がある。最も興味深いのは国家教育委員会(現在は教育部)の情報機関だ。ここから各国に国費留学生として派遣された学生は、スパイ活動を行っている」

姚氏は、中国当局は海外に行く留学生を通じて、「つばめ計画」を展開していると指摘した。これらの学生はスパイとして中国情報機関組織内に登録されていない。つばめが泥を巣に持って帰ってくるように、中国人留学生が海外で価値ある情報を取得し帰国すると、「安全のために」、情報機関当局の担当者が個別に接触しているという。

姚氏は中国人留学生に対して、中国当局に利用されないよう呼び掛けた。中国人留学生が外国で摘発されれば、直ちに中国当局に見捨てられるからだ。

「私はその例だ」1997年姚誠氏は中国当局の指令で、ラオスから当時先端技術を用いたロシア製対潜ヘリコプター(Ka-28)を盗み出した。しかし、ロシアからの強い外交圧力を受け、中国当局は1998年中国海軍の法廷で、海外に国家機密を漏えいしたとして、姚氏に7年の禁固刑を言い渡した。

また、これまで中国当局による対外浸透工作を暴いてきた中国駐オーストラリア・シドニー総領事館の元領事、陳用林氏は中北大学がスパイ養成機関である可能性が高いとした。

豪シンクタンク・オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は昨年10月に発表した調査報告書で、中国軍は長年、中国人留学生を通じて西側の軍事情報や技術を盗んできたと批判した。報告書は、中国軍は海外に2500人の工作員を派遣し、そのうちの300人が豪国内にいると述べた。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: