中国色が濃くなる「インドの裏庭」ニューデリーも手をこまねく
モルディブのヤミーン大統領は、中国共産党政権主導の現代版シルクロード構想「一帯一路」に積極的なかかわりを見せる。2014年9月、習近平氏が同国を訪問した際は手厚くもてなした。2017年12月に中国とモルディブは自由貿易協定(FTA)を締結した。
国際通貨基金(IMF)の最新報告によると、モルディブの対外債務は2016年に34.7%だが、2021年にはGDPの51.2%まで跳ね上がるという。IMFは、モルディブ政府の総収入はわずか約10億ドルであるのに対し、対外債務返済費は少なくとも向こう4年は年間9200万ドルになると試算した。
亡命中のナシード元大統領によると、少なくともモルディブ港建造含め3件の中国融資プロジェクトが、モルディブの対外債務の80%を占めると述べた。
中国政府から返済困難な融資を受け、その担保として、モルディブ港は中国国有企業に貸し出された。採算の合わない融資計画は「債務トラップ」とも悪名高い、インド南部スリランカのハンバントタ港の建造と共通点がある。いずれも、中国海洋交通路戦略である「真珠の首飾り」や、先に上げた一帯一路において、インド洋の要所となる港だ。
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スリランカは昨年12月、債務不履行(デフォルト)を避けるために、99年の賃貸借契約で中国国有企業に港の運営権を移管した。特徴的な「99」という数字には、中国語で久久(ジョウジョウ、永久の意)と同音で、「永久に手にいれる」との意味を持つ。
99年契約は、ほかにも中国嵐橋集団のオーストラリア北部ダーウィン港のリースが知られている。 また、パキスタンも40年間借款でグワダル港の管理権を中国に明け渡した。
期待されるも介入にしり込みするインド
ナシード氏ら野党指導者らは、モルディブの主権が脅かされているとして、長期にわたり外交関係を保つインドに対して、現ヤミード政権による政治家、報道関係者ら拘束された人々の解放などに向け、軍の支援を再三呼び掛けている。
一部の専門家は、中国の影響力が強まるなか、モルディブの危機は、インドと中国の間の摩擦を引き起こす恐れがあると警告する。2月14日、米紙ニューヨークタイムスは、ニューデリー拠点の防衛研究分析研究所アナン・クマール氏の分析を伝えた。
同氏によると、インド政府は紛争回避の姿勢に立ちたいものの、2012年以降のナシード政権では、親インドから親中に移行し、インドの影響力が低下しており、対応に苦慮しているという。
「中国はすでにモルディブの経済、政治、軍事的利益に深く根を下ろしている。インドにとって(中国モルディブに割り入るような)互恵的な関係は成り立たないだろう」と述べた。クマール氏は、南シナ海の島嶼の軍事化を例に挙げて、「モルディブは中国の拡張主義が進んでいる中の1ステージに過ぎない」と警告した。
インド中央政府は、裏庭であるインド洋諸国の政情混迷への助け舟を出すことにしり込みしている。インド安全保障当局にも勤めたアジア外交に詳しいラジャスウェリ・パレイ・ラジャゴパラン氏は、外交分析メディア「ディプロマット」にて、ニューデリーの躊躇が続けば、東南アジアの群島諸国は成す術はないとみて、さらに中国依存が深まっていくとの懸念を示した。
(編集・佐渡道世)
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