韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は13日午前、就任後、初めて国賓として中国を訪れた。それに合わせて、中国中央テレビ(CCTV)は文在寅大統領のインタビューを全国放送した。しかし、放送内容で大統領の北朝鮮核問題、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)などに関する部分が大幅に編集された。
韓国有力紙・朝鮮日報(13日付)によると、CCTVの取材陣が8日に韓国大統領府(青瓦台)で文大統領に対してインタビューを行い、11日、この25分間のインタビュー内容を中国全域で放送した。同紙が大統領府(青瓦台)から入手した大統領の発言内容とCCTVのインタビュー番組の内容を比較した結果、大統領の一部の発言が編集、またはカットされたことがわかった。
文大統領は訪中目的や習近平国家主席に関する印象を述べたほか、インタビュー中、在韓米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)問題について多く語っていた。CCTVは番組の冒頭で「THAADに関する意見対立によって、中韓両国の関係が史上最悪となった」とのナレーションを入れた。
報道によると、CCTVのキャスタ―はTHAADに関して3回、質問した。
CCTVは番組放送中、「THAAD」をめぐる悪化した両国関係の修復に合意した10月31日の中韓首脳会談に触れ、テロップで、韓国政府が当時中国側に示した3つの立場、いわゆる3不原則を紹介した。具体的な内容は、「THAADの追加配備をしない、米国のミサイル防衛(MD)に参加しない、米韓日軍事同盟はない」である。
朝鮮日報によると、その映像の後、キャスターが文大統領に対して、THAAD問題について「どんな努力が必要だと考えるか」「中国側が抱く安全保障上の利益侵害に対する懸念を解消するために、どんな措置をとるのか」と、質問攻めになった。
これに対して、文大統領は「韓国はすでにTHAADに関する立場を明らかにしている。それは決して新たな立場ではない。以前から韓国が守ってきた立場だ」と答えた。しかし、「朝鮮日報」によると、CCTVは「それは決して新たな立場ではない」との部分をカットした。
同紙は、CCTVのキャスターは質問を通じて、大統領に「三不原則」の履行決意を引き出そうとしたと指摘。また、歪曲的な編集手法で、中国人視聴者に対して、THAAD問題で韓国側が譲歩したとの印象付けを図った、と批判した。さらに、キャスターが一国の大統領に対して「執拗に責め立てる」「無礼」だと非難した。
海外中国語メディアは、韓国政府は「3不原則」を中韓共同声明に盛り込まない方針のため、文大統領が今回の訪中で、「共同声明」と「記者会見」を行わないと決めた、と報じた。
一方、朝鮮日報の報道によると、北朝鮮問題について、文大統領がCCTVのインタビューで「北朝鮮が認識を改め、非核化の道に進むことが重要」「強力な制裁と圧力が必要」を述べたが、これらの批判的な表現が全てカットされた。
その代わりに、CCTVは「軍事的な解決方法に反対する」との論調で番組を進めたという。CCTVは、文大統領が過去米政府に対して、「韓国の事前同意なしの軍事行動はあり得ない」との発言を紹介した後、「半島問題において、中韓の立場と目標は一致している」と強調した。
韓国メディアは同時に、中国当局は訪中した文大統領を冷遇していると批判した。13日、文大統領が専用機で北京入りした際、習近平国家主席などの指導者らは南京事件の記念式に出席するため、北京にいなかった。李克強・首相との昼食会も午後に延期された。
(翻訳編集・張哲)
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