「中国の食品業界で詐欺は蔓延しており、想像しうるケースは何でもあると言っていい」。さまざまな国の小売業と食品製造を調査する米企業インスカテック(Inscatech)のCEOミッチェル・ワインバーグ氏は最近、英インディペンデント紙の取材に、中国の食品調査について答えた。
世界最大規模の生産国であり、消費国である中国。同時に、食品産業で偽造と詐欺が蔓延している国でもあり、食の安全保障に関心の高い国でもある。中国で食のビジネスに関わる企業は最近、食の安全と信頼を得るため、製品情報を追跡できるブロックチェーン技術を利用している。
しかし、専門家は根深い偽造問題へは対処法に過ぎず、根本的な解決方法ではないと指摘する。
中国では食品偽造問題が定着しており、国内外で信用度は低い。メラミン入りの毒粉ミルク事件により、少なくとも6人の乳児が死亡した事例は有名だ。他にも、漂白エビ、カドミウム米、「食塩」として売られる工業用塩、「食用油」として売られる下水から拾った廃油など…枚挙にいとまがない。2014年、上海の食肉加工業者が、上海、香港、マカオのKFCとマクドナルドに、賞味期限切れの鶏肉を供給していたことが明らかになった。日本に一部は流通した可能性があると報じられている。
米ミシガン州立大学で食品偽造問題を調べるジョン・スピンク氏によれば、偽造食品は世界の食品産業に年間400億ドル相当の損失を与えている。ピュー・リサーチセンターは、2016年の中国人の食料安全保障に対する調査では、40%が「非常に大きな問題」と答えた。2008年の12%から大きく増加している。
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グローバルな関心 食品安全保障サービスはビジネスに
ワインバーグ氏の会社は、デジタル技術を駆使して、食品偽造問題に対応するビジネスを展開している。たとえば、本物と偽物を見分けるために、自社開発の専用機器で食品の「遺伝子フィンガープリント」「分子のタグ」を管理。つまり、ネット上の分散型台帳システムといわれる「ブロック・チェーン」技術を利用して、農場から家庭に届くまでのルートを追跡している。
上海拠点のコンサル企業チャイナ・マーケット・リサーチ代表ショーン・レイン(Shaun Rein)氏 は、「消費者はどこから製品がきたのか、知りたがっている」と同紙の取材に答えた。「中国から流通する食糧はグローバルサプライチェーン全体の一部であり、(食品ブロックチェーン)が果たす役目は大きい」とレイン氏は語る。
食品関連の大手企業はブロックチェーンをすでに導入している。中国に400店舗を置く米大手スーパー・ウォールマートは昨年10月から、中国流通において豚肉にこのサービスを使っている。今年の6月も、上海のIT関連企業・衆安科技も同様に、鶏肉で、ブロックチェーンを駆使して養鶏場、加工工場、市場、販売店舗の流れを記録するサービスを発表した。
最先端技術でも不正は防げない
しかし、情報は偽造しにくいブロックチェーンの技術だが、食品偽造問題においては「対処法」に過ぎない。ワインバーグ氏の会社は、提供情報の分析を基本としているが、提供された情報が嘘である可能性はある。真偽の判別は困難だ。ワインバーグ氏が扱う情報は、中国で仕事をする欧米の会社のものだという。
「不誠実なデータ提供者はいる。ブロックチェーンを使っても、個々のデータを細かく調べなければ食品の偽造を防止することができない」とワインバーグ氏は語った。
国際刑事機構(インターポール)で違法製品を調査するマイケル・エリス氏は、「世界の工場」と呼ばれる中国は、規模が大きく、係わる人口も多く、複雑な行政部門という特徴があり「あらゆる業界の隅々に、不正にお金を稼ごうとする犯罪者がいる」と指摘する。
エリス氏は、食品偽造を阻止する努力を続けなければ、この不正な産業の「爆発的な成長は続き、もはやどこに導かれるか、誰にもわからない」と、グローバルに広がる食品詐欺が人々に与える有害さを警告した。
(翻訳編集・佐渡道世)
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