中国 ドキュメンタリー映画

21分で知る 恐るべき中国医療の真実「メディカル・ジェノサイド」

2017/05/30
更新: 2022/09/01

「ホロコーストが異なる形で、今も続いている」と、中国の臓器濫用を調査者の一人は述べた。

中国医療で「ブーム」となった臓器移植。2000年以降、移植件数は100万件にのぼるという。ドナー不明のまま膨大な移植件数をこなすことができたのはなぜか、施術までの待機時間がわずか数日なのはなぜか。10年の調査に基づいた中国医療の裏側に迫るドキュメンタリー映画が、このたび、封切られた。

 

2006年にカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏と同国元アジア太平洋地域大臣デービッド・キルガー氏が公にした、中国で収監者が臓器を強制摘出されているとの問題を指摘した調査レポートの発表から10年以上が経った。

21分のドキュメンタリー映画「メディカル・ジェノサイド」は、米ニューヨーク拠点の中国臓器強制摘出調査センター(China Organ Harvest Research Center)が制作。Youtubeなど動画配信サイトで鑑賞できる。

映画は、2人の調査者が知った中国の医療界で起きている人道犯罪や、米国人ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏の調査結果を加えた2016年の最新報告書の内容、そして世界の臓器移植関連法に与えた変化などについて伝えている。

中国の闇に隠された臓器移植の問題 人権弁護士氏らが最新報告書

いけすから、活きの良いのを選ぶかのように 「豊富に用意された臓器」の謎

現在、中国は国内外からの移植希望患者を受け付け、年間6万から10万件もの臓器移植を施していると推計されている。しかし、国内で自発的にドナーとなる者は、年に一桁とごくわずか。

中国政府は、移植用臓器を死刑囚から摘出していることは認めているが、国際人権団体アムネスティによると、国家機密とされる死刑執行数は数千とみられており、その数は移植件数に相応していない。

映画の中で、調査を通じて知ったキルガー氏が脳裏から離れないエピソードを語る。ある海外からの腎臓移植希望患者1人に対して、腎臓が絶えず用意され、中国で数カ月の間に8対もの腎臓が移植を試され続けたという話を語る。

「ひとりの臓器移植希望患者ために、8人が殺されたということだ」。

(中央から左に向かって)人権弁護士デービッド・マタス氏、元カナダ政府官僚デービッド・キルガー氏、ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏。
2016年6月、中国の臓器強制摘出問題について最新報告書を発表したことを、米国国家記者クラブで会見した(李莎/大紀元)

 

「いけすから活きのいいロブスターを選び、拾い上げて、解体するようなものなのか」と、人を癒す職業であるはずの医師が、大量殺人犯になっていることに、キルガー氏は驚愕する。また中国では、いけすのロブスターのように、「ドナー」を無限に用意することができる環境にあると指摘する。

調査報告書によると、この臓器移植用に使用される臓器の元は、中国共産党にとって「封じ込めるべき存在」と見なされ、囚われの身となった無実の人々であるという。チベット人、ウイグル人、地下教会信者、法輪功学習者などが、本人の意思に反して「ドナー」とされた人々だと考えられており、犠牲者数は毎年数万人に上ると推定されている。

報告書を受けて、臓器出所源の不明な国へ渡航して移植手術を受けることを禁止する法案が、イスラエル、スペイン、イタリア、台湾で可決した。米下院議会では2016年6月、良心の囚人からの系統的な強制的な臓器摘出を非難する「343号決議案」が満場一致で通過した。

両氏の調査に加え、米国人ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏を加えた、さらなる追随調査報告者が2016年6月に発表された。前回のレポートが中国政府発表に基づいていたのに対し、ガットマン氏は独自に各病院の移植手術の許容数を調査し、年間件数を算出した。3人は、ノーベル平和賞候補者になっている。

フリーダムハウス報告「臓器の強制摘出は今も続いている」 臓器の違法摘出を調べるジャーナリスト、2017年ノーベル平和賞候補に

調査官「日本は、臓器移植濫用の共犯とならないように世界をリードできる国」

調査官の一人であるマタス氏は2016年12月に来日し、国会議員に文書で、大量殺人の可能性をはらんだ中国の臓器移植の問題について注視し、移植法整備に努めるよう、うながしている。

中国での移植手術の濫用と日本との関わり デービッド・マタス氏 2016年12月1日 / End Of Organ Pillaging

文書の中で、マタス氏は「報告書から10年以上経過したが、日本では、中国での移植濫用の共犯になることを避けるための措置はとられていない」とし、「日本は技術上、世界をリードする国家である。しかし、中国での移植濫用について知り、日本の協力を撲滅するための行動が起きない理由として、沈黙という『共謀』を示唆させる」とつづっている。

「日本は、中国での臓器移植濫用の共犯にならないように世界に情報を発信し、世界をリードする能力を備えた国である」とし、 日本での移植法整備に向けた動きを活発化させるよう、強く訴えている。

(編集・佐渡 道世)