中国金融業界の腐敗取り締まりはいよいよ江沢民派高官の一族に及んでいるとみられる。最高指導部に近い消息筋などによると、江沢民元国家主席の孫の江志成氏(31)、中央政治局常務委員、党中央書記処常務書記の劉雲山氏の息子・劉楽飛氏(44)は出国禁止など行動の自由が制限されている。
米国に住む中国共産党政権の長老である故・羅瑞卿氏の息子、太子党の羅宇氏(73)は大紀元本部の取材で、複数ルートからの内部情報として「江沢民氏の息子2人は今、ほぼ実権をとりあげられたが、習近平陣営は今、江志成氏と劉楽飛氏の切り崩しに取り掛かっている」と話した。
中国では、太子党(指導部高級幹部の子弟)が投資会社を設立することで、一族の政治的力で巨額の富を築くのは常套手段だ。前出の両氏はとりわけ、金融業界での勢力基盤が広い。
江志成氏は2010年にハーバード大卒業後、米大手投資銀行ゴールドマン・サックスの香港現地法人勤務を経て、9カ月後に香港で博裕投資顧問会社を設立。中国電子商取引最大手のアリババの大株主になるなど数々の大型投資を実現した。
一方の劉楽飛氏は、中国最大手証券会社・中信証券の副会長などを経て、今はグループの中信産業投資基金管理公司(運用資産90億元、約1440億円相当)の会長を務めている。
両氏が不利な状況に陥る背景には、中国金融業界の風雲児、「金融大鰐(金融界の巨大ワニ)」とよばれる肖建華容疑者(44)が今年1月潜伏先の香港で逮捕されたことがある。巨大投資会社「明天控股」の実質経営者である肖容疑者は陰の江派高官ら一族に代わって多くの国有企業を破格の安値で買収するなど精力的に動き、大規模横領の代行人(白手袋、汚職の黒い手を隠す白い手袋のこと)と言われている。
肖容疑者は江派の金融政変に関与したともみられる。政権に近い消息筋によると、2015年半ばに起きた、ひと月の間に上海証券取引所のA株が株式時価総額の3分の1を失った中国株大暴落は、江沢民派の金融筋グループが情報操作やインサイダー取引、空売りなどを駆使して誘発したもので、習近平指導部を仕留めるための「金融政変」だった。「1兆元(約16兆円)以上の保有資金を駆使すれば株価を操ることができる」と言われている肖容疑者は主犯格の1人で、当時最大手証券会社・中信証券の副会長だった劉楽飛氏が主導したとみられる。
この一件で、中信証券の複数の重役が取り調べを受けて更迭されたり、当時の社長が逮捕された。劉氏自身は同年末に副会長職の辞任に追い込まれた。
消息筋の話では、肖容疑者が同一派の汚職事実を全面的に自供したため、江派の金融組は絶体絶命だ。
次期最高指導部の人事を決める今年末の党最重要会議・第19回党大会で習近平陣営が権力基盤を強化するには、金融の安定を確保するのが一大事。一方、対立する完全劣勢の江沢民派は先の金融政変と同様、金融システムを狙った反撃策を打つとも予想される。そのため、習近平サイドは逮捕された江派の「白手袋」の肖容疑者を突破口に、秋の党大会までに江派の金融組にとどめを刺すと予想されている。
習陣営は腐敗撲滅運動のもとで、すでに公安・司法・検察を束ねる政法委系統(政権の刀)、軍部(政権の銃)における江派の勢力ネットワークを切り崩した。これからは金融業界(政権の金庫)の粛清に本腰を入れるようだ。
(翻訳編集・叶清)
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