世界最大な会計事務所のデロイト・トウシュ・トーマツ(DTT)はこのほど、インド、マレーシア、タイ、インドネシアとベトナムは将来5年間に、中国に代わって「世界の工場」となるとの研究結果を発表した。香港紙「経済日報」が22日報じた。
報道によると、DTTが企業の最高経営責任者(CEO)を対象に行った調査で、将来5年間にインドなどの5カ国が低コスト製造業の最大経済体に形成していき、アパレル、おもちゃ、紡績商品などの労働集約型商品を生産していくだろうと予想。インドなどの5カ国は新たな世界の工場となるだろうと見ている。DTTは、この5カ国の英語の頭文字から「MITI-V」と称している。
5カ国の中で、インドは高技術労働者と低技術労働者の両方がいて、12億人の人口という巨大な市場との優勢を持つ。インドには高水準の教育を受けた学生も多く、製造業企業が求めるエンジニアや管理層などの人材を与えることができる。
この魅力を持つインドは新たな低コスト製造センターになる可能性が高い。中国通信機器メーカー大手の華為技術は昨年9月に、今後インドの工場で毎年300万台のスマートフォンを製造していくと発表した。また、台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)も昨年、インドでiPhone製造工場の建設に100億ドル(約1兆1200億円)を投じると発表した。
また報道では、専門家はタイとマレーシアは、自動車、化学、機械、ゴム加工産業などの高等と中等技術製造業をより重視しているため、新たな低コスト製造センターにならないと予測している。ベトナムの最大な優勢は人件費にあると示された。
「世界の工場」地位を失いつつある中国
近年、外資企業の対中投資の減少と中国からの撤退増加で、「世界の工場」と称されてきた中国はポジションを失いつつある。
2017年に入ってまだ2カ月過ぎていないが、すでに3社の大手外資企業が撤退と人員削減を発表した。
1月7日、米ハードディスクドライブ製造メーカー、シーゲイト・テクノロジーは中国蘇州の工場を閉鎖すると発表した。これによって、約2000人の従業員が失業となった。同月9日、米ファーストフード大手のマクドナルドは中国本土と香港での事業を、20億8000万ドル(約2330億円)で中国国有企業に売却した。
1月中旬、中国国内メディアは、米ソフトウェア大手のオラクルが北京の研究開発センターの約200人を人員削減し、3月31日までに対象となる社員の辞職を要求したと報じた。
昨年も、フィンランド携帯大手ノキア、オランダ電機メーカーフィリップスなどの外資企業が相次いで中国から撤退した。
中国経済金融情報サイト「中金在線」(23日)は、中国国家統計局によると、16年外資企業による固定資産投資額は約1212億元(約2兆604億円)で、11年の約3270億元(約5兆5590億円)と比べて、わずか5年間で約63%縮小したと報道した。
撤退の主因 コスト上昇と投資環境の悪化
外国企業が次々と中国から撤退した理由は主に2つがある。まず、土地・人件費コストの上昇で企業の収益が悪化した。日本経済新聞中国語版は21日、中国労働者の賃金は毎年10%のペースで上昇している一方で、中国の製造業のコスト費用は現在米国と比べて、4%しか低くないと指摘した。
2つ目は中国の投資環境が以前ほど好意的ではなくなった。在中米国商会が1月18日に公表した調査結果によると、約8割の在中米国企業が「当局は過去のように、外資企業を歓迎しなくなった」と訴えた。また約25%の企業は中国から撤退を計画しているという。
在中EU(欧州連合)商会も昨年に発表した調査報告で、中国当局の外資企業に対する法律の執行プロセスは非常に不透明だと指摘した。
また、インターネット検閲、知的財産権侵害問題、市場障壁の多さ、企業間の競争激化なども外資企業が撤退する理由だ。
昨年12月、中国商務部がまとめた『中国外資企業投資報告』によると、外資企業全体で直接に雇用した人口数は4500万人以上で、中国都市部の就業人口の1割以上を占める。外資企業は、その下請け企業や関連サービス企業の雇用も創出しているため、外資企業の撤退に伴い、今後中国の失業者が確実に増えるだろう。
(翻訳編集・張哲)
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