法輪功迫害 独占インタビュー

著名弁護士、新法規の発表で「中国司法当局に変化の兆し」

2016/05/26
更新: 2016/05/26

江沢民が迫害政策を実施する口実となった、法輪功一万人「4.25陳情」から17年が過ぎた。共産党独裁政権の国を挙げた法輪功への迫害が17年目になる今、司法当局の法輪功関係の案件に関する扱い方に変化が現れてきた。そのことについて、中国の著名弁護士で東南大学法学部教授でもある張賛寧氏を取材した。

張氏によると、このところ法輪功学習者に対し、以前のようなひどい迫害がかなり少なくなったほか、司法当局は弁護士が法輪功関連の裁判に関わることを露骨に禁止したり妨害したりしなくなり、弁護士が法廷で学習者の無罪を主張することも容認するようになってきた。同氏はこのことについて、江沢民が法輪功迫害を命じたこと自体がそもそも違法行為だったことを指摘した上で、目下中国で進められている法整備は、まさに江沢民を法廷に引きずり出すことを念頭に置いて行われているようだと述べている。

法輪功への迫害と関連案件への妨害が 以前ほど露骨ではなくなった

張氏は、最近扱った法輪功案件の手応えから、司法当局は以前のように露骨に法輪功学習者を迫害しなくなったことは明らかだと指摘し、以下のように述べた。

「以前なら、「洗脳班」「看守所」「労教所」といった強制収容施設に送られた学習者は、凄惨な拷問を含む迫害を受けるため、体に障害が残ったり、死に至るケースがよくあった。だが現在では拷問も減ってきたし、起訴されるだけにとどまっているケースが増えてきた。

弁護士に対しても、以前なら司法当局から「この種の案件を扱うな」「こういう案件については上に報告しないとだめ」「無罪を主張したり弁護したりすることはできない」と明確に通告し、弁護を妨害されていたが、今では弁護士に対するこうした強制的な規定はなくなった。もちろん弁護士事務所や弁護士本人に対し圧力がかかることもないわけではないが、そのような事例は明らかに減少した」

今では、弁護士が法廷で公に、国の法治体制を破壊し憲法第36条に違反したと江沢民の責任を追及した例もあるが、その弁護士は司法当局から何の圧力も受けていないことが、状況の変化を如実に表していると分析している。

さらに、司法部門を管理する党機関の中央政法委員会(政法委)の力が以前ほどではなくなったことも指摘している。「政法委は、以前は絶大な権力を振るい憲法を無視し法輪功関連の案件に次々と介入し干渉していた。これが中国の法制度の推進を大きく後退させていたことはもちろん、重大な憲法違反でもあった。一政党が法律や憲法の上に立つなんておかしいことだ。幸い(習近平国家主席による腐敗撲滅運動の一環として)2013年に政法委が降格されてからは、裁判に干渉することはできないと通達された」

先ごろ中国の最高人民法院(最高裁)が発表した法廷関連の新しい規則についても言及している。特筆すべきことは、全ての公開裁判を自由に傍聴できるようになった点で、同氏はこれが法輪功関連の裁判にとって有利に働く可能性があるとしている。

「以前は法輪功関連の裁判では傍聴者数が制限されていた。中には被告の家族用に残された数席以外、傍聴席がすべて当局の動員した人員に占有されたこともあった。そのため一般の法輪功学習者は裁判を傍聴することもできなかった」

実名で江沢民を告訴したから拘束や逮捕されることは「極めで悪質」

昨年5月末から、習近平政権が公表した「有案必立」という新しい司法政策をきっかけにして、江沢民が法輪功への違法な取り締まりを指示したため、心身ともに不当な迫害を受けたとして、中国の法輪功学習者とその家族らが次々と実名で江沢民の告訴を開始し、その数は現在までに20万人を超えている。

「現在多くの学習者が拘束される理由は、ただ彼らが江沢民を告訴したからである。憲法では全ての人が法の下に平等であることを保証されており、いかなる人物も憲法と法律を超える特権を持つべきではない。誰かを告訴しただけで逮捕されるのは、極めで悪質なことであり、当局が唱えている「法治国家」と完全に逆の方向に向かって進むことになっている」

司法関係者の意識変化 冤罪判決の責任追及

張氏は最近、江沢民を告訴したため捕まえられた法輪功学習者の案件を取り扱う過程で、司法関係者の面白い変化に気付いた。

例えば、法輪功関係の案件を処理する場合、法廷に持ち込む前の検察段階で、許される限りの追加調査や延期手続きを使い、最大限に時間を延ばそうとしている傾向がある。また、法廷審理が終わってもなかなか判決を下さず、検察院に差し戻したり延期したりして、明らかに判決を引き延ばそうとしている。

「上から何か新しい政策があるのではと伺っているようだ。彼らも法輪功の冤罪は早かれ遅かれ晴らされるだろうと分かっているが、生活のため不本意に政府の政策に従い法輪功学習者の有罪判決を下すのだ」

さらに張氏の話では、警察の取り調べ段階で、弁護士の介入と交渉により、学習者が釈放されたケースもあり、もっと不思議なことに、法廷で審理された案件がいつの間にかうやむやのうちになくなってしまったケースも出てきたという。

今年の年初最高裁判所の沈徳咏副院長が、新たに任官した45人の裁判官の宣誓を行う時、「これまでの党に忠誠するとの宣誓ではなく、憲法と法に対し忠実であれ」と強調した。また政府職員の在職中の責任は、退職してからも生涯追及されることがあるという新しい法規が発表された。

これは大きなヒントであると張氏は言う。「引退しても在職中に行ったことに対し自らの責任を負うべきだ。だからこそ私は、法に携わる者はその在職中に憲法を遵守し、法に基づき公平で独立した判決を下さなければならないと常々口にしている。文化大革命当時に発生した大量の冤罪事件では、その後多くの人々の無罪が立証されたが、加害者個人の責任が追及されたことはほぼ皆無だった。しかし当時と今では状況が違う。判決を誤れば、それに対する責任は追及されるし、場合によっては刑事責任にまで発展することもある。だから私は司法関係者がこのことを十分に留意するよう、促している」

江沢民が法輪功をカルト集団としたことは全くの濡れ衣に他ならない

法輪功弾圧政策について、張氏は次のように述べた。「法輪功の弾圧政策は完全に江沢民1人の考えで決定されたものだ。弾圧が始まる前の8年もの間、法輪功が存在し続けていたことが何よりの証拠だ。この間、法輪功が反社会勢力であるなどと指摘したものは誰もいなかった。中国の法律では、刑事責任を追及するにはその団体に明らかな危険性がなくてはならないが、法輪功にはそれが無かった。つまり、江沢民が法輪功をカルト集団としたことは全くの濡れ衣に他ならない」

さらに、法律の角度から次のように分析した。「法輪功は法の秩序を乱したと非難されているが、法律は明確で、具体的でなければならないはずだ。意味のあいまいな法律などありえない。現在法輪功学習者に対するすべての起訴状には2つの不備がある。一つ目は被告人が実際にどの法律に抵触したのかという記載がないことだ。起訴状に具体的な法規名すら挙げられていないなど、お話にもならない。二つ目はどの法律に違反したかを証明できなければ、提供されたすべての証拠や起訴事実にも真実性はない。ということは、起訴自体が成立しないというなんともでたらめな話だ」

法輪功問題において、江沢民は法の秩序を乱した張本人だと張氏は言う。「江沢民は中国の最高指導者として在任中、仏フィガロ紙に対し法輪功はカルト集団であると一方的な断罪発言をした。これこそ立派な違法行為である。彼は国家主席として法の何たるかを理解していたはずだし、憲法や法律を遵守する立場にあったはずだ。つまり、全て分かったうえで行っていたことだ」

臓器狩りの真相を解明するため 特別調査委員会を作るべき

法輪功学習者や支援者が17年間、迫害真相の暴露に努め、迫害の停止を訴えてきた。共産党政権が、法輪功に対する残酷な迫害、さらに学習者の身体から生きたまま臓器を摘出し闇ルートで売りさばくという、いわゆる臓器狩りを行っていることは、もはや世界中が知るところとなった。このことを当局はネット封鎖や情報操作を行って国民にひた隠しにしているが、今や多くの中国人がネット封鎖を突破してこの事実を知っている。

「私自身、臓器狩りは事実だと思っている。江沢民政権下では、受刑者から臓器を摘出するなどたやすいことだったし、たくさんの外国人が中国へ臓器移植手術を受けに来ていた。大連にあった死体加工工場で、大量の死体から人体標本が作られていたが、臓器の無い標本が多数あったと聞いている」

張氏は、政府が特別委員会を組織して、この件についてきちんと調査を行うよう主張している。これは避けて通れない問題である。米国やカナダなどでは、中国当局の弾圧政策はナチス政権下のホロコーストよりも残酷だとして明確に非難の声が上がっている。中国当局も一刻も早く調査を開始し、真相の解明を図るべきだ。

(翻訳編集・桜井信一/単馨)