「おばあちゃん、私のこと見捨てないで。元気になって学校に行きたいの!」買い物に出かけようとする祖母にすがりつき、涙を浮かべて訴えるのは、4歳の昌昌ちゃん。安徽省合肥市に住むこの女の子は、小児がんを患っている。米通信社ブルームバーグがこのほど、高額の医療費を支払えず経済的苦境に立たされている中国の小児がん患者たちとその家族を取材した。
一昨年9月に昌昌ちゃんが白血病と診断されてから、これまでに支払った医療費はすでに26万元(約486万円)にのぼる。「もし医療費が支払えなくなったら、治療をあきらめるしかない」昨年10月、祖母の李徳芳さんが口にしたこの言葉を、昌昌ちゃんはまだはっきりと覚えている。
治療費の捻出に苦しむ患者やその家族が病気の治療を断念することは、中国では決して珍しいことではない。中国のがん患者の割合は世界一高く、世界的水準からみても医療費は比較的高い。任意の医療保険は完備されているとはいえず、国の健康保険では医療費のかさむ重篤患者の治療費はカバーされていない。そのため、経済的に余裕のない癌患者は、病気と闘いながら金銭的な不安も抱えるという二重の苦しみを味わっている。
昌昌ちゃんの祖父母は田舎で農業を営んでいるが、年収はわずか7000元(約13万1000円)。病院の近くに家を借り、昌昌ちゃんと一緒に住んでいるが、10平米のぼろぼろの借家に支払う月々の家賃は390元(約7300円)。月収にして約1万1000円の収入しかない祖父母には、家賃も大きな負担となっている。昌昌ちゃんの父親は街に出て力仕事をしながら昌昌ちゃんの母親と弟を養わなければならず、彼女の医療費まで賄うことはできない。
昌昌ちゃんはすでに12回の化学療法を受けてきた。幸い、今のところ病状は安定しており、担当医も完治する可能性が高いとしている。とはいえ、家族にのしかかる経済的負担は依然として大きく、ほとんどの医療費を親戚から借り集めてきたが、まだ1万元(約18万7000円)の治療費を延滞している。病院側は、その分の支払ができないのなら、次の治療を行うことはできないと宣告した。
昌昌ちゃんが服用している抗菌剤は10錠で2800元(約5万2000円)、化学療法薬1本の価格が5000元(約9万4000円)といずれも高額だ。
昌昌ちゃんの住む界隅では、治療中の子どもを抱えている30を超える家庭が臨時住まいを構え、どこの親も治療費に全ての財産をつぎ込んでいる。おもちゃが欲しいかと尋ねられた別の4歳の小児患者はこう答えた。「いりません。それよりも薬を買うお金が欲しい。薬がないと生きていけないから」
昌昌ちゃんの隣に住む悠悠ちゃんも小児がんを患っている。「もう30万元(約561万円)も治療に使いました。その半分は親せきや友人からの借金です」母親はこう漏らした。
◇中国人の経済的重荷である高額医療費
中国では薬代と治療費が非常に高いため、一般的な収入の中国人は食費を削ってでもこつこつと貯蓄をし、大半が、万一のときの医療費を貯めているのである。
中国当局のデータによると、登録されている貧困層(1日当たりの収入が1ドル以下の人口)は890万人。世界保健機関(WHO)の統計では、中国人(平均年収およそ3200ドル(約39万2000円、ブルームバーグ))は医療費の77%を自己負担しているが、アメリカ人(平均年収は約4万ドル(約490万円、同)の自己負担額は医療費の22%にすぎない。
合肥市の化学療法医師は、お金のない病人は治療をきっぱりと諦め、お金のあるものだけが生き残るようになっているのが中国の現状だと口にした。
◇大気や水質汚染などを原因とするがん患者の割合が高い
中国でガン罹患率の1位~5位は、肺がん、胃がん、直腸癌、肝臓がん、食道がんで、死亡率が最も高いのは肺がん。中国の第3回居住者死亡原因調査の結果で、肺がんの死亡率は過去30年間で465%上昇し、2012年の全世界の肺がん死亡者数のうち、中国人が3分の1を占めていることが明らかになった。肝臓がん、食道がん、胃がんもそれぞれ同51%、49%、40%と高い割合である。13年には、わずか8歳の中国人女児が肺がんと診断された。
専門家は、中国大陸の大気汚染が深刻さを増したことが、肺がん罹患率の上昇した主な原因とみている。
さらに水質汚染、重金属汚染といった要因が重なり、中国で癌発生率が異常に高い村落「がん村」が激増している。昨年、中国官製メディアが全国の「がん村」は247カ所と発表したが、民間の統計では、その数は459カ所に上るとされる。世界銀行の統計データでは、中国では毎年46万人が環境汚染による疾病で死亡している。
(翻訳編集・桜井信一、叶子)
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