この記事は、質より量の中国スパイ 学生に「愛国精神」呼びかけ(1)の続きです。
中国のスパイ活動がずさんで警戒不足に見えるのは、その大雑把な方法にある。情報保全企業ブラック・オプス・パートナーズ(BlackOps Partners)の情報部門責任者ポール・ウィリアムズ(Paul Williams)氏によると、スパイには「捕まってはいけない」という大原則があるという。そのため各国はいくつもの綿密な予防策を講じている。
しかし中国の場合、その原則が当てはまらない。小さな活動をする留学生は捕まれば切り捨てられる。「予防策が少なく、大きなリクスを犯している」とウィリアムズ氏は分析する。また、大勢で仕掛けるため、何が盗まれたのか判明しにくいという。中国人スパイの「質より量」作戦は成功している。実際、中国へ多くの情報が流れた。
元中国スパイで現在は体制批判家の陸東(ルー・ドン)、氏は、中国の諜報ネットワークが「非常に複雑」だという。陸氏によると、レベルの低いスパイ活動は中国共産党中央統括部と在外中国公館を通じて指示され、高レベルな技術を必要とする活動は中国軍総参謀部の第三部・技術偵察部が担当する。この第三部には少なくとも20万人が在籍しているという。米国のセキュリティ会社マンディアント(Mandiant)によると中国軍のサイバー戦部隊「61398部隊」はこの第三部二局に所属している。
オーストラリアの中国スパイ被害
中国の大規模なスパイ被害は、米国だけではない。オーストラリアも最近、類似した状況に置かれている。同国主要紙シドニー・モーニング・ヘラルド4月21日付によると、中国はオーストラリアの学生協会に諜報網を張り巡らせている。しかもこのネットワークは学生を監視し、圧力を掛け、共産党体制を擁護するための活動に加わるよう働きかけている。
同報道によると、オーストラリア政府諜報機関は圧倒的な中国のスパイの数に対向しきれず、現在、防諜活動能力を強化しているという。
駐シドニー中国領事館元外交官の陳用林(チェン・ヨンリン)氏は、同氏が離職した2005年当時、単独で1000人以上の中国人スパイがオーストラリアにいたと大紀元の取材に答えている。
中国人スパイの活動は、情報を盗むだけではない。共産党体制に批判的な人間の監視もしている。中国人留学生や教授は、互いの発言や思想を確かめる行動を取る。陳氏によると学生スパイは例えば、国際空港で中国政府高官の来訪を歓迎し、抗議集団を抑えこんだり、情報収集をしたりするという。
陳氏が離職する時に持ちだした内部文書には、中国公館が共産党の指示を実行するために、オーストラリアの学生協会の諜報網利用方法が記されている。それによると、シドニーの中国総領事館が行っている他の役割の中で、そのスパイ網に協力する新入生を募集し、海外の中国語メディアを贈賄したり、西洋政治を浸潤したりしているという。
米国の連邦捜査局(FBI)は4月、海外旅行をする学生向けに、情報機関からの買収に注意するよう警告を発した。FBIは2011年、上海で中国のスパイ活動に加担した罪で米国人学生を逮捕し、4年の禁錮刑を下した。仲介者は、米国中央情報部(CIA)潜入を企てていたという。
中国の諜報部は留学生に、滞在中の各国政府機関や大企業の「内部通告者」になってほしいと思っている。FBI事務局はインターネット・ラジオで、「外国の諜報機関は、将来への成功に結びつく。ビザ支給を手伝うなどと甘い言葉を掛けるが、それらは全て陰険で無意味な約束だ」と警告する。「学生の将来など考えていない。諜報組織は目的を達成するため、学生を都合よく利用しているだけだ」と述べた。
(おわり)
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