警察の取り締まりに無念 中国大使館前で10年間抗議する年配女性たち

2012/04/20
更新: 2012/04/20

【大紀元日本4月20日】東京の六本木にある中国大使館前には、10年前から平和な抗議活動を続けてきた年配の女性たちがいる。日本に暮らす法輪功学習者だ。彼女たちは毎日大使館の前で、中国政府による法輪功弾圧の中止を求める横断幕を掲げ、大使館に来る中国人に弾圧の真相を説明する資料を配布している。しかし18日から、この抗議活動は麻布警察署に、横断幕1枚と参加者5人まで、と制限されるようになった。

帰国孤児の親族である58歳の鞍貫さんは、毎日朝5時半に家を出て、ビル清掃の仕事を終えた後、中国大使館に向かう。「朝食を取る時間もない。昼食はいつもおにぎりやパンで済ませている」という。

また、66歳の王貴雲さんは往復約4時間かけて、大使館にやってくる。彼女は10年前から毎日ここで中国人たちに弾圧の真相を伝える資料を配り続けているという。「中国政府の宣伝に騙されて、法輪功を誤解している中国人は多くいます。時には罵倒されたりもしますが、中国政府にマインドコントロールされている彼らこそ、一番の被害者なのです。なんとしても皆に真相を知らせよう、との一心で、長年がんばって来れました」と彼女は語った。

10年、土日を除いて毎日続けてきた抗議活動。大紀元記者は、大使館前に来るのを止めようと思ったことはあるか、と質問した。

26年前に日本に帰国した戦争孤児である73歳の鈴木あつこさんは、次のように答えた。「確かに疲れることはよくあります。しかし中国の刑務所には数十万人の法輪功学習者が監禁されています。私たちがいま話している間も、誰かが拷問に苦しんでいたり、誰かの臓器が強制的に摘出されているかもしれません。彼らの声を国際社会に届け、中国の同胞に弾圧の真相を知らせられるのは、私たちしかいません。そう思うと、どんな困難の状況でも乗り越えられます」

しかし、ここ最近、彼女たちの活動は難題に直面している。

退去を命ぜられる学習者(大紀元)

法輪功弾圧の陣頭指揮者の一人、江沢民派の中心メンバーの薄煕来氏はこのほど、党中央のすべての役職から下ろされ、身柄拘束されて取り調べを受けている。そのことについて、彼女たちは薄氏の失脚は天罰であるという内容の横断幕を掲げたが、現場を警備する麻布警察署の警官隊に度々阻止されるようになった。

18日午後、警官が大使館前の横断幕を強制的に撤去しようとし、抗議者を押すなどの行為をしたため、抗議活動を続けたい学習者との間でもみ合いになる場面があった。現場にいた法輪功学習者は「このような横暴な警官の行為には失望しました」と洩らした。

麻布警察署から、法輪功による抗議活動を制限する理由について、説明はない。突然の取り締まりに、法輪功学習者たちは、中国大使館による圧力があったのではないかと推測している。

退去を命ぜられる学習者(大紀元)

雨にも風にも負けず、雪の日でも炎天下でも、大使館の前に立ち続ける法輪功学習者たち。今回の警察の対応に、無念さをあらわにする。「警察官たちは、中国国内の止むことのない激しい残虐な弾圧の真相をよく理解していない。本当にその残虐さを知ったら、良識ある民主国家の警察官として・・・」と声を詰まらせた。

「街では善良に見える警察ですが、中国共産党の圧力を恐れ、それに媚びる姿など私たちは見たくありません。(横断幕の撤去などの)強権を奮うのは、中共の真相を知らないから」こう述べる学習者たちだが、迫害の真相を日本社会に伝える活動が足りていないことを自省していた。

2月初め、直轄市である重慶の副市長であった王立軍氏がアメリカ総領事館に駆け込んだ「重慶亡命騒ぎ」を発端に、闇に覆われた中共政治の内情や弾圧などの非人道的行為が次々と国際社会に暴露された。捨て駒のように、重役であった薄煕来氏が党内の全役職を解任され、現在は、法輪功迫害において主導的な役割を果たす周永康氏への断罪の声が、国内外で次々に上がっている。

法輪功(ファルンゴン)とは、中国伝統文化の一つである気功の心身健康法である。約20年前から完全無料で一般に公開普及してきた。心身の健康に効果が高いことから、一般庶民から政府高官や軍の関係者も含めて、中国社会の各層で学習する人が爆発的に増加。弾圧されるまでは、愛好者は1億人に上ったと推定されている。当時の江沢民・前国家主席はこのことを政権への脅威と受け止めて、1999年7月に弾圧を命じた。

政権の内部情報によれば、当時、中共の最高政策決定機関である「中共中央政治局」の常務委員7人のうち、江沢民氏を除く6人は弾圧を支持しなかった。温家宝首相も内部会議で度々、法輪功弾圧問題の是正を提起しているが、江沢民派は頑として弾圧を推し進めている。そのことは胡・温政権と江沢民派が対立する核心的な問題の一つでもあるという。

 (記者・叶子、張本真)

(4月23日23時:一部、記事内容を修正)