途上国の枠から抜け出す巨龍 スウェーデン国際関係研究者の分析

2011/10/28
更新: 2011/10/28

【大紀元日本10月28日】国際関係や発展途上国を研究する人々は、「BASIC」と呼ばれる4つの大国、つまりブラジル、南アフリカ、インド、中国の動きを注視している。スウェーデン王立国際関係研究員で中国研究者のヨハン・ラーゲルクヴィスト氏は自身のブログで、今後、中国はBASIC内での枠を脱して国際社会での声を拡張させていく、と分析する。

4大国の外交関係は決して安定的なものとは言えない。特に中国は、ブラジルとは「通貨戦争」で、インドとはチベット自治政府と国境問題で、長年にわたる問題を抱えている。研究者たちは、現在、多国間協議が求められる気候変動問題や貿易協定について、この4大国が果たして同盟を結べるのか疑問視している。

特に注目されているのは、民主主義と福祉政策を打ち出すブラジルと、独裁的な権威主義社会で成長する中国の関係だ。大きな枠組みとしての国際社会で、中国は東アジア地域で、ブラジルは南アメリカ地域でそれぞれ影響力を拡大しつつある。将来的には、両国の声はIMF、世界銀行、WTO、G20のような国際的組織の中でも重みを持つようになることだろう。

2010年、デンマークで開かれた気候変動会議「COP10」で多くの決議がまとまらなかった要因には、BASICが米国とEU諸国に対して抵抗し続けたことにある。BASICは気候変動について、先進諸国が二酸化炭素の排出量を100年多く累積させた結果であり、BASIC各国は工業化を通して国内の生活水準を上げる合法的な権利がある、という主張を貫いた。WTOの多角的貿易交渉「ドーハ・ラウンド」でも一見、終りのない、先進国と新興国間交渉のこう着状態が続いている。このようにBASICは、先進諸国に対抗する時は、協力体制をとる。

「しかしながら、どのように同盟国の多い民主主義国ブラジルと、世界で盟友の少ない権威主義的な中国が将来、世界的な公共政策の領域で、困難な問題に協力して取り組むことができるだろうか?」 ヨハン・ラーゲルクヴィスト氏は疑問を投げかける。この2つの大国は、西側先進国と米国の行動を覇権主義的な動きと認識する点では合意する。

しかしその認識が変化したら、つまり覇権国が弱体化し、長年世界が持っていた共通概念が失われたとき、BASICのような国々の持つ価値観は世界の共通認識となる。世界金融危機の際、各国への影響とその対応から、覇権的に動くのは西側先進国ではなく中国だということをブラジルは初めて認識した。

ブラジルは2010年、対中国貿易で52億ドルの黒字を記録した。発展と交易のバランスの中で、両国関係は、資源大国として工業国に従属する植民地のような古典的なものになりつつあるようだ。工業国は原料を精製し、付加価値をつけて商品として輸出する。ブラジルは非工業化していると複数の研究者が主張しており、ブラジルの農業ビジネスは中国企業が開拓しているのが事実だ。

中国の経済規模が広がるにつれ、政治的リスクも拡大する。中国はBASICのような新興国としての課題の枠から強引に抜け出すことだろう。そして、前述の国際機関の中で、既存の国と立場を入れ替える。すでに国連安全保障理事会の中で、常任理事国としての中国は非常任理事国であるブラジルに不平と不満をもたらし、BASICの立場を抜け出す構えを見せている。

他の問題も同様に加熱されつつある。ブラジルのマンテガ財務相は2011年春、輸出大国である中国が、元を過小評価して貿易上の優位性を保っていると指摘、通貨戦争の危機を警鐘した。気候変動問題についても、異なる方針を採る両国間で、摩擦が起こる可能性がある。このように、政治的にも貿易経済の点においても両国間には多くの違いがある。加えて、印中間には地政学的な問題が存在する。

今日の問題を将来的な視点から議論するとき、BASICブロックが国際協議に参加すると、決議にいたるまでのゴールを遠ざけることになるだろう。 このブロックが途上国の枠に当てはまるものではないからだ。

(翻訳編集・佐渡 道世)