【大紀元日本5月25日】特別列車での極秘訪中。金正日総書記が好むこのスタイルは、昨年の5月と8月に続いて、今月20日にまた繰り返された。中国政府系紙・環球時報は21日、この訪中を「高層部間の通路」だと称し、この通路の存在に「世界は喜ぶべきだ」という社説を発表した。一方、自身のパイプ役を称える中国政府に対し、専門家らは、中国政府を後ろ盾に北朝鮮は「ならず者」になっていることを指摘し、中国政府が自身の利益のためにその「ならず者」ぶりを利用していると非難している。
環球時報の社説
21日付のこの社説では、「世界は喜ぶべきだ。国際社会と北朝鮮の間の中国という通路は閉じられていないことを」とアピールし、中朝間交流は「南北関係の緩和や、北東アジアの平和にとって有益であり、悪循環に陥りがちな朝鮮半島の情勢にとって『中和剤』の役割を果たしている」と自らの功績を称えた。
社説はさらに北朝鮮の核問題を弁護する。「北朝鮮当局がもっとも不安視しているのは安全問題だ」として、問題解決のため、北朝鮮当局は経済自立を最重要課題に掲げていると社説は主張。しかし「米国と韓国は北朝鮮の現政権を同国発展の障碍と見なしている」とし、両国による長期にわたる「敵意」と「孤立」が、北朝鮮を「軍事が先」か「経済が先」か、政策方針上で迷わせている、と批判した。
米国や韓国、日本への批判がさらに続いた。「米韓日などは、(北朝鮮問題で)『中国の役割が大切だ』と言いながら、実際に期待していることは、中国が北朝鮮に圧力をかけて、北朝鮮を彼らに有利な方向に向かわせることだ」。社説は最後に、中国を効果的に働かせるために、北朝鮮に圧力ばかり掛けるよう期待することは間違っていると米韓などの国に釘を刺した。
専門家「北京の支持なしでは金政権は崩壊している」
米国で発行されている中国情報誌『北京の春』の胡平・編集長は本紙取材に、環球時報の社説は「根本的に間違っている」と反論した。金政権は北京の支持がなければとっくに崩壊していると胡氏は指摘し、「これはまさに中国政府が一番恐れていることだ」という。「中国政府は北朝鮮問題で非常にたちの悪い役を果たしながら、朝鮮半島の平和を守るために北朝鮮に改革を促すという正義の味方の役に扮している」と批判した。
北京の「独立中文筆会」前理事長・張暁剛氏は、中国と北朝鮮はお互い利用し合っていると指摘した。「北京は、自分が唯一『ならず者国家』北朝鮮に影響を与えられる国という優勢を自ら作り、それを欧米と交渉する時のカードにしている」という。中国政府はそんな金正日政権を好んで支持しており、金政権もまた中国政府の後ろ盾があるからこそやりたい放題ができると張氏は分析した。「中国が北朝鮮に、経済封鎖を施行するか政治的な圧力をかければ、金政権は崩壊してしまう。しかし実際は、中国政府は北朝鮮の『無頼さ』を利用している。国際社会で北朝鮮に『爆弾』というイメージを植え付け、そのイメージを利用して欧米と取引きしている」
北朝鮮に「中国式」は通用しない
温家宝首相は22日、金総書記を招請した理由として、「中国の発展ぶりを理解し、自国に活用するための機会を与えた」と韓国の李明博大統領に語ったという。これに対して、『北京の春』の胡編集長は、「中国式」は北朝鮮にとって極めて困難だと指摘する。北朝鮮は、1989年に中国で起きたような民主運動を恐れており、その恐れは、弾圧する力に不安を感じていることに加え、隣の韓国の存在にも不安を感じているためだと胡氏は分析する。北朝鮮で中国のような民主運動が起きた場合、韓国が黙って見ているはずがない。「そうなると、金政権は経済改革により崩壊しかねない。金親子はこの道では慎重に慎重を重ねるだろう」
また、北朝鮮が「中国式」を推し進めることは国際社会にとっても決して喜ばしくないと胡氏は警告している。北朝鮮が「第2の中国」になれば、朝鮮半島のみならず、世界平和にとっても脅威的存在になることは今と変わりはない。「それどころか、さらに大きな脅威的存在になりかねない」
「金正日氏は共産党の専制政権や、自らの家族の政権掌握を持続させたい一心だ。政権が他人に握られたら、自分が粛清の対象になるのではないかといつも危惧している。これが彼が頻繁に中国に顔をだす理由だ。つまり、助けと保障を求めるわけだ」と胡氏は分析した。