【大紀元日本4月25日】日本と同様に島国の台湾は、天然資源に乏しく、輸入に頼っている。しかもその取引先は、情勢不安定な中東・北アフリカ、また軍事強化でしばしば脅威を見せる中国だ。昨年、供給率0.6%と最低を記録した台湾は、エネルギー安全保障の確立が急がれている。
台湾は2008年、「永続エネルギー政策綱領」を発表し、再生可能エネルギーの割合を2020年度までに16%に引き上げるなどの具体的数値目標を掲げ、本格的な改善に取り組んでいる。石油、石炭、ガスなどのエネルギーバランスと一人当たりの消費量など、似通った点の多い日本は、台湾の政策に学ぶべき点は多い。
台北在住のアメリカ政府奨励生、自然再利用エネルギーと都市環境研究を専門とするベンジャミン・フォックス氏は、このたび、台湾のエネルギー事情と安全保障に関する論文を外交専門誌「ディプロマート」に寄稿した。以下はその抄訳。
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今日、「エネルギー安全保障」と「エネルギー独立」といったテーマはしばしば論議される。将来的に枯渇が懸念される石油エネルギーの依存に警鐘を鳴らす国も少なくない。
国際エネルギー機関(IEA)の統計によると米国は約7割、中国統計局によると中国では約8割をそれぞれ、自国の生産エネルギーで賄っている。しかし島国・台湾では、かなり事情が異なっている。
2003年のエネルギー源構成は、石炭39%、石油61%、天然ガス8%、水力1%、原子力10%。昨年、台湾は主要な一次エネルギーの供給率は最低の0.6%を記録した。これを受けてコメントを求められたある元台湾防衛省の官僚は「エネルギー安全保障?」と返したという。台湾では99%を超えるエネルギーを、情勢不安定な中東地域、また軍事的脅威をちらつかせる中国に依存している。
台湾は1978年まで、20%のエネルギー供給率を保持していた。この30年の劇的な滑落は、国内のわずかな石油と天然ガス、石炭を使い果たしたことが原因と見られている。
現在、台湾は主にペルシャ湾諸国と西アフリカから石油を輸入している。マラッカ海峡を通過し中国南東部沖に沿う資源輸入ルートは、中国が海軍艦隊を強化させていることを考慮すると、継続的に自由を確保できるルートとは言えない。あるいは、もし中国からの石炭供給が停止されれば、約1カ月分の備蓄しか残らないことになる。これらのことは、台湾の政策担当者をかなり悩ませている。
輸入依存と中国軍事に絡む台湾のエネルギー事情は、常に脅威に晒されている。この背景には、「両岸協定」が増えたことも一因となっている。台湾CPC(中油公司)と中国国営・中国海洋石油総公司(CNOOC)は1994年、共同事業提携を結んでいる。2008年にはこの2社のほかに、2つの中国の石油複合企業も参加した台湾海峡の油田の共同探索に合意した。この見返りにONOOCは台湾CPCに、アフリカの石油資源を譲渡した。さらに最近、東日本大震災で原発事故が起こったことを受けて、この2社は、核の利用と危機管理体制への強化についても「共同」で取り組んでいるという。
中台の両岸協定が強化されることは、強い経済的繋がりを意味する。台湾の馬政権の間に、この繋がり強化は、画期的な経済協力の枠組みの合意(ECFA)を結ぶに至らせた。しかし最近、馬氏の支持率は急落しつつあり、2012年の大統領選に踏みとどまれるかどうかは疑問視されている。もし反対勢力が与党になれば、同時に台湾エネルギー安全保障を危険にさらすことになる。
台湾の政局の未来は不確かだが、台湾は少しずつ、この心もとないエネルギー事情を改善するために本格的に動き出した。同国経済省は2008年6月、「永続エネルギー政策綱領」を発表し、エネルギーとエコロジー、エコノミーの3Eの統合、そして新エネルギーの開発、普及や省エネなどを推進する方針を打ち出した。
具体的な目標としては、今後8年間に毎年エネルギー効率を2%ずつ向上させ、2015年には2005年比でエネルギー原単位を20%以上減少させる。そして技術力と政策措置により2025年には50%以上を減少させる。また、2020年にはエネルギー構成全体の16%を再生可能エネルギーにするという。
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震災による日本の原子力発電所事故を受けて、国営台湾電力は原子炉の追加建設の計画中止を発表した。また原発全体の発電量削減も検討しているという。同社は現在、3つの発電所を運営しており、4つ目の建設計画を進めていた。さらに台湾当局は、33年前に稼動を再開した第一発電所の認可延長申請の審査も凍結した。
台湾では長らく、原発推進派の国民党と脱原発派の民進党が2極論を展開してきた。今回の日本の原発事故を受けて、原発エネルギー推進派の勢力は鈍化し、また与党内でも4つ目の建設計画に反対する声も目立ってきた矢先の「中止計画」発表だった。
民進党代表・蔡主席は「25年までに原発を廃止する」と唱えているが、代替エネルギーの確保のないままの廃止論に、無謀だとの批判もある。
石油やガスなどの天然資源に乏しいものの、台湾は火山帯に位置し、島国である点において、地熱や潮力を利用したエネルギー開発の可能性はある。被災国・日本も、原発事故を受けて、東京を中心にエネルギーバランスの崩れとともにこうした新エネルギー導入論も強まってきた。環境に類似点の多い日本と技術力の面で協力し、関係強化を図るべきでだろう。