「腎臓移植の仲介で荒稼ぎ」 中国の生体臓器売買の闇

2011/04/20
更新: 2011/04/20

【大紀元日本4月20日】26歳の胡傑さんは湖南省出身。17歳から広東省で溶接工として働く。2千元(約2万5千円)の月収に苦悩する胡傑さんは、次第に博打に手を出す。昨年10月、公園で同郷人と賭け事をした胡さんは2万4千元(約30万円)負け、2カ月以内に支払うこととなった。途方に暮れた胡さんはインターネットで「有償腎臓提供」の広告を目にし、4万元(約50万円)で自分の腎臓を売ることにした。

そして今年1月6日、3人のブローカーと一緒に胡さんは山西省臨汾の長良医院に向かった。しかし、田舎の粗末な病院を前にした胡さんは足がすくんだ。「まさかこんな所で手術をするとは。ここで死んでしまうかも」と恐怖に怯える胡さんにはもう逃げ道がなかった。病院の扉が締まり、3人のブローカーが胡さんを取り囲んだ。泣き叫ぶ胡さんに、3人は「叫んでも結果は同じだ。腎臓を取らせないと命を取るぞ」と言い放ったという。

夜8時、胡さんは簡易な手術台に乗せられた。「1分もしないうちに、手の甲に点滴と麻酔が打たれた」。目が覚めたのは夜の11時頃。腹部に激痛が走り、めまいもする。服を捲ってみると、左の下腹部に新しい傷口ができていた。「彼らは14針縫ったと言うけど、測ってみたら15センチもあった」。翌朝ブローカーが姿を消し、携帯に「2万7千元振り込んだ。人にしゃべるな」とのメッセージが残っていた。

14日付の香港誌「壹週間」で報じられたこの案件がいま中国で注目され、山西省衛生当局や公安当局が調査に入っているという。しかし、このような腎臓売買は決して個別案件ではない。「1年で40万元(約500万円)稼げる」と腎臓売買を仲介する汪さんは明かし、ブローカー達は病院と密接な繋がりを持っていると証言する。広州市の病院で泌尿器科の副主任を務める朱雲松さんは、腎臓移植の費用は30万元から40万元で、「臓器の提供元は気にしなくていい、たっぷりある」と話している。

「腎臓1つの仲介で4万元は稼げる」

中国の「人体臓器移植条例」では、生体臓器のドナーは原則として血縁者または家族に限定すると定められている。しかし、17日に発行された国内誌「三聯生活週刊」の報道によると、中国では毎年150万人が腎臓移植を待つが、ドナーが見付けられるのは1万人に止まっている。そしてこの巨大な需要に、多くの不法ブローカーが群がり、貧困な暮らしをしている人々をドナーとして登録させ、患者とドナーとの間の親族証明を偽造するなどして、移植の実施にもっていくという。

現在服役中の蔡少華はこのようなブローカーの1人。河南省出身の蔡は2000年に専門学校を卒業し、省都の鄭州市で小さな商売をして生計を営んだ。2008年に同郷人の紹介で上京した蔡は、ドナーの生体組織検査に付き添う役を務め、その報酬として月1000元(約1万3千円)の収入と住居・食事の無料提供を受けていた。手術までたどり着いた場合は5000元の臨時収入も得ていた。

1年後には蔡はブローカーとして独立した。彼は北京のある総合病院の近くにアパートを借り、毎日透析病室の前まで通うようになった。透析に訪れる患者やその家族に声を掛け、移植の必要性と意思を確かめるという。「移植を受けたい患者から生体組織に関するデータをもらい、専用サイトに掲載する。ドナー側のブローカーはそれを確認し、適合したドナーがいたら連絡をしてくれる」とその仕組みを供述した。

ドナーが決まった後、患者とドナーの間に血縁関係の存在を証明するため、蔡は身分証明書や倫理証明書などを偽造する。一式の書類にかかる費用は400元(約5千円)。一方で手術当日に患者側からもらうお金は約12万元(約150万円)。そのうちの4万元はドナー側ブローカー、4万元はドナーに振り込み、残りの4万元は自分のポケットに入れる。

2009年3月から5月までの2カ月間に、蔡は4件の腎臓移植に関わり、仲介料10数万元を手に入れたという。

さらに蔡の供述によると、移植を行う北京のすべての病院に彼のような臓器ブローカーが出入りしており、「誰がどの病院を担当するかは暗黙のうちに決まっていて、情報交換もしている」という。

「生きて行くために、貧者は臓器を売り、富者は臓器を買う」と三聯生活週刊は同報道で指摘し、その両者に加え、病院は利益を得るため仲介者の出入りや偽造書類に目をつぶり、ブローカーは間で暴利を得ている。

法輪功学習者に対する「臓器狩り

多くの臓器ブローカーは、2007年に「人体臓器移植条例」が中国で施行された後に出現した。それまでは、中国の臓器は「充足」しており、海外から中国へ渡航して臓器移植を行うケースも多かった。膨大な臓器の出所が不明の中、監禁された法輪功学習者がその提供元となっている可能性が指摘されてきた。

中国で移植手術を斡旋する日本人ブローカーは昨年「法輪功の人が(臓器摘出の)ターゲットになっていた」と匿名で本紙に証言している。また、中国から海外に逃亡した医療関係者の証言や、カナダの国際人権弁護士デービッド・マタス氏とカナダ外務省前アジア太平洋州局長デービッド・キルガー氏が行なった独立調査により、法輪功学習者に対する「生体臓器狩り」の実態が暴露されている。

今月11日にもマタス弁護士はボストン大学で講演を行った際に、この種の臓器狩りは「依然として存在し、しかもさらに増えている可能性がある」と述べ、「ナチスの虐殺は大戦後にやっと暴かれたように、生きている法輪功学習者から臓器が摘出されている真相も中国共産党が解体された後に、その全容が明るみに出るだろう」と語った。

(翻訳編集・張凛音)