<上海万博>宴はお開き 喜べない中国人 翻弄される日本人

2010/11/03
更新: 2010/11/03

【大紀元日本11月3日】10月31日、184日間にわたった上海万博の宴もようやくお開きとなった。日本のヒットソング盗作騒ぎではじまった上海万博は、その後の不穏な日中の半年を予告したようだ。半年間、上海万博は日中関係の温度計として敏感に働き、時には友好の象徴として、時には抗議の手段としてその作用を果たした。一方、宴の主人であるはずの中国人も「やっと終わった」と自らの心境を表し、華麗な外観に隠された内実を、中国人自身が一番よくわかり、一番むなしく感じているのだ。

喜べない中国人

「ドイツ人の友人は、上海にホームレスは見当たらないし、豊かで清潔で、ベルリンと比べるとまるで天国のようだと感心していた。僕は言えない、万博が始まる前に上海のホームレスが上海から追い出されたことを。僕は言えない、我が政府の警察車は車内が汚されるのも恐れずに、社会の底辺で喘ぐ彼らを見ず知らずの都市に置いて来たことを。僕は言えない、あなたの車を停めさせるために、あなたから尊重を得るために、我が政府は人々の家をむりやり取り壊したことを」

これは上海在住のライター・王維氏が、上海万博閉幕の日、10月31日にBBC中文ネットに投稿した記事である。記事は、上海万博で数々のスローガンや記録を実現したものの、表の装飾だけに止まり、国民一人ひとりに目を向けていないと指摘した。

7万人のボランティアを誇る上海万博は、国内外の来場者に熱心なサービスぶりをアピールしていた。万博ホットラインも設けられており、17カ国語であらゆる質問に答えると唱える。王維氏も一度道に迷いダイヤルをしたが、中国人だとわかったとたん、オペレーターは「このサービスは提供しない」と言って電話を切った。途方に暮れた王氏は同じ番号に英語でかけてみたところ、オペレーターは丁寧に教えてくれた後、「Have a nice day, sir(いい1日でありますように)」と礼儀正しく返事したという。

国民が尊重されていないもう1つの例として、王氏は「マナー意識の低い」人々を取り上げた。「彼らのなかには、何日もの食事を背負って、上海万博参観を人生最大の目標とする農民もいる。上海万博を中国の誇りだと思っているのも、まさにこれらの農民や地方からはるばるやって来た庶民である。彼らは外国へ行くチャンスもなく、上海で各国の宝物が見れることを誰よりも喜んでいる。あなたは彼らを嫌っているかもしれないが、彼らの上海万博への憧れと尊重は、世界の中国に対する憧れと尊重よりもはるかに上だ」

記事の最後に、「同じ中国人であるこの人たちが他の中国人から尊重されないような社会なら、他人を尊重することを知らない中国人がどうして世界の尊重を得られるだろうか」とつづった。

翻弄される日本人

上海万博の入場者数目標の7千万人は、40年前の大阪万博の6400万人を超え、過去最高の記録を打ち立てるために設定した人数とされる。招待券や団体券、国有企業や地方政府の万博ツアーの追い上げによって、目標は閉幕6日前に達成されたという。

しかし、7千万人の仲間入りをしたくてもできなかった人もいる。SMAPはその代表と言えよう。万博開催前にすでにSMAPの公演が決まっており、現地メディアも大々的に報じていたが、5月30日に行われた韓国アイドル・スーパージュニアの公演で負傷者が出た騒ぎを受け、6月13日に開催を予定していたSMAPの公演が安全上の理由から中止となった。その後、10月9日、10日に再び公演を計画していたが、今度は尖閣諸島事件の影響で、一方的にイベントが中止とされた。

また、9月21日から万博視察のため上海入りする予定だった日本の大学生ら1000人の青年訪中団が、その直前の19日の夜、突然、受け入れ延期が伝えられた。すでに荷造りを済ませた大学生らは、その後の再招待に対し、323人が訪中を取りやめた。

大阪の橋下知事も閉幕イベントへの招待があったものの、万博事務局から理由を示されないまま一方的に招待のキャンセルを伝えられたという。知事の激怒ぶりが功を奏したのか、中国総領事から「万博事務局の手違い」と謝罪され、あらためて招待を受けたという。

愛知万博に毎日通っていた愛知県瀬戸市の山田外美代さんが、上海万博でも「皆勤賞」を達成した。そんな上海でもっとも有名な日本人でも、10月1日の中国デー式典への招待が「日本人だから」という理由で一度は取り消しになった。後に、山田さんが「万博は国境を越えたイベント。国籍は関係ないでしょ」と問い詰めると、あらためて招待状が届いたそうだ。

国家の威信をかけた上海万博。「より良い都市、より良い生活」をテーマにした万博の半年間、中国は国力誇示とともに、一連の事件への対応で見せた世界支配の野心が世界を驚かせた。「ポスト万博」の中国は今後どこへ向かうのか、世界中が目を凝らして見ている。

(張凛音)