中国各地:土地強制収用問題で官民衝突激増

2006/12/14
更新: 2006/12/14

【大紀元日本12月14日】中国共産(中共)党当局はこのほど、新しい地価を公示し、来年の1月1日より現公示価格の倍になることを発表した。これに対して、中国各級高官らが年末までに土地を買占める可能性が高いとの見方が出ている。中共当局管理下の土地は、官民結託による莫大な利益を獲得するドル箱と化し、土地の強制収用や暴力的な略奪はすでに中国全土に波及している。一方、土地を急に失った村民たちは、訴える先がなく、土地を守るために自ら立ち上がったが、すべての抗議活動は武装警察の鎮圧を受けた。

中国各地で、11月上中旬だけで少なくても5件の大規模の村民集団抗議事件が発生した。すべては、官民結託による土地の強制収用が発端であり、地元政府幹部を軟禁したこともあった。

11月8日、広東省順徳市三州村の約1万人の村民は、強制収用された土地に建設された大型食糧倉庫を包囲し、土地収用の関連書類の提示を要請した。当局が提示した書類では、収用した地価総額が13万元(約190万円)に対して、村民たちに支払った金額はわずか3万5千元(約51万円)だった。また、書類に記した収用土地面積が300ムー(約20ヘクタール)に対して、500ムー(約33・3ヘクタール)を収用し、実質上200ムー(約13・3ヘクタール)も多く収用したことが分かった。しかし、広東省当局は当日夜、約千人の武装警察を出動し、翌日に警棒および催涙弾の発射により、抗議に集まった村民たちを追い散らしたという。

11月10日、広東省汕尾市東洲鎮の村民らは、土地強制収用問題で勾留された村民代表・陳チェンさんの釈放を地元政府に要請したが、無視されたため、地元行政府の職員8人を人質にした。双方は9日間対峙したのち、当局は機動隊を出動し8人の職員を連れ戻したという。昨年、住民が射殺される事件がここで起きている。

11月11日、福建省プーティアン市新度鎮で政府の土地収用に反対する村民数十人の抗議に対して、当局は武装警察百人ほど派遣して棒と盾で村民を殴打し、抗議行動を鎮圧した。村民十数人が負傷し、55歳の村民は頭部をひどく殴られ重体に陥った。村民によると、政府側が土地を強制収用するたびに、官民衝突が起きているという。

11月上旬、山東省済南槐蔭区張荘村の村民約千人が土地収用と立ち退き問題で、地元政府幹部を軟禁した。当局は千人以上の武装警察を出動し鎮圧を行い、20数人の村民が負傷したという。

11月末に広東省順徳市希湧村の村民の千ムー(約67ヘクタール)の土地が村の元行政幹部により売却されたことが発覚後、村民たちは関連工場を包囲し、土地収用の書類および賠償を求めた。しかし、地元警察は民選された新任の村委員会幹部を含む20数人の村民を逮捕した。事件発生後、数百人の村民は村委員会へ集まり、土地を売却した元幹部容疑者の家族2人を実質上軟禁した。2人は翌日に解放された。

最近では、農業を営む村民たちはこれまでの少人数の抗議から、横の連帯を強化し、連合するようになり、村民が中共幹部を人質にするケースも出ている。

*村民たちは「土地を守る組織」を結成

中共官製誌「半月談」は、安徽、江蘇、浙江、重慶、河南、陝西等地区において、農民たちが「土地を守る組織」を結成する新しい動向が現れたと報じた。報道によると、農民が土地を守る組織の経費は各農家からの寄付金で成り立っているという。また、分散型の組織は大規模および長期にわたる直訴の活動に従事し、密集型の組織は、短時間で相当の人数が集められるため、当局または土地開発仲介者に対する抗議活動を行うという。

*鎮圧は官民対峙深刻化をもたらした

長期にわたり中国の農村問題に強い関心を寄せている作家の鄭義さんは、中国で官民結託によって、土地を強制収用し、農民に対して適切に支払わないことは実質上、形を変えた略奪であると指摘し、農民たちは訴える先がなく、為すすべのない状況下で、当局職員を軟禁する方法を考え出したとの見解を示した。

政治評論家で「北京之春」誌の胡平・編集長は取材に対して、中共当局は民間の直訴および抗議に対して、正論であるか否かが一切関係なく、すべてに対して鎮圧の手段を取っていることから、民衆は強硬なやり方で自らの権利を守らざるをえなくなったとし、これに対して、当局はさらに、軍隊を出動できる新たな規則を作ったと分析している。

胡編集長は、中国の官民衝突問題が日々深刻化し、昨年10月中共当局が広東省広州市太石村の村民を鎮圧し、12月に汕尾市東洲村の村民射殺事件から、今年に入って、人権弁護士の高智晟氏、人権活動家の郭飛雄氏、陳光誠氏の逮捕まで、中国の人権活動に対する鎮圧がエスカレートしたと指摘した。胡編集長は、村民たちが取っている方法は危険ではあるが、一部の地方幹部に対して威嚇作用があるとの見解を示した。

一方、北京当局は11月に発表した「突発事件における軍隊の緊急対策草案」の中に、軍事衝突の他に、地方治安と社会安定の維持、大型テロ破壊事件、災害時の救助及び公共安全突発事件が盛り込まれている。同草案は、頻発している民衆の集団抗議に対応する措置であるとみられる。

これに対して、作家の鄭義さんは、軍隊は国家に属するものであり、如何なる政党および政治勢力にも属さず、外敵の侵略に対応するものであると指摘した。中国国内では機動隊を含む警察は武装が備われているにも拘わらず、軍隊を動員することから、公安や武装警察が頻発している民衆暴動に対する処理ができなくなったからだとの見解を示した。