【大紀元日本11月28日】吉林省吉林市の化学工場が今月13日爆発し、有害物質が松花江に大量に流出した。21日ハルピン市は水道水の供給停止を通知、市民生活は大きな混乱に陥っている。当初断水は配管工事によるものとされていたが、その後水源である河川の汚染が原因であることが発覚。中国の隠ぺい体質の深刻さを改めて際立たせる結果となったが、その裏には中国の巨大企業による企業買収が絡んでいた。アジア時報24日が報道した。
中国国家環境保護局の11月23日の発表によると、化学工場の爆発のため有害のベンゼンが近隣河川の松花江に流出し、松花江から基準値の100倍以上のベンゼンが検出されていにもかかわらず、吉林省地方政府当局は当初より流出物質による汚染は「国の定めた安全水質の基準値より低い」と強弁していた。事件発生後、中国温家宝首相は国務院常務会議の中で「環境保護の実績を地方幹部の評価項目とする」旨明言しており、今日見られる地方の中央離れの現象に一定の歯止めをかけようとする決意がうかがわれる。
『上海証券報』11月15日の報道によると、中国石油天然ガス株式会社が61.5億人民元を出資し、吉林化学工業株式会社(吉林化学工業)を含む関連会社三社を子会社する化計画が進行中であり、その公告が11月15日に出されていた(香港証券取引所=香港聯合交易所=公告)。しかしこの汚染事故は、この子会社化手続にとって大きな障碍となると考えられ、また中国石油天然ガス株式社会に巨額の賠償金が請求されることを恐れ、関係者が意図的に汚染事故の隠ぺいを謀った疑いがある。また、事実上地方の実権を握る吉林省委書記・王雲坤氏が吉林化学工業出身で、吉林化学工業の製油工場主任を歴任しているという事実も今回の汚染事件隠ぺい工作の背景にあったと言えよう。
『北京晩報』は23日にハルピンの断水事件について、吉林化学工業の工場の爆発による河川汚染の情報をなぜ最初から公開しなかったのか。特に河川汚染の情報が周辺のメディアの知るところとなったとき、なぜ一社も報道しなかったのか。ハルピン放送局の取材に対し、なぜ河川の汚染はないとコメントされたのか?と地方政府による対応の不手際、メディアの姿勢に疑問を提起している。
ハルピン市政府は公表の遅れについて、商事取引及び投資が盛んに行われる時期であり、また旅行シーズンでもあるため、事件発生直後直ちに公表しなかったが、後に市民の生命、健康を考慮し、水道水の供給停止を決断したと説明している。しかし実際ハルピン市政府は21日に2回の断水通知を出しており、当初断水は水道管修理のためとしながら、後に化学工場の爆発による汚染が原因であると通知内容を変更した。この矛盾をどう説明するのか?
今回の事件は、中国の一部の地方政府官僚が貪欲に利権を追い求め、市民の生活環境を軽んじる現在の政府の政策を批判するきっかけとなった。中国『新京報』11月24日の報道によると、ハルピン市政府がその飲用水の90%を松花江に依存している状況にあるにもかかわらず、吉林省内の松花江河川沿いには多くの化学工場が建設されており、数十年前から工場廃水による松花江の汚染は問題視されてきた。しかし利権追求のため、松花江下流地域に住む住民の健康を無視し続けてきた。吉林省書記および吉林化学工業は汚染事件について23日に謝罪したが、汚染発生から10日間の地方政府の対応、企業およびメディアの姿勢が問われている。
中国の隠ぺい体質の他、今回の汚染事件から見て取れるもう1つの重要な点は、地方政府の中央政府離れという現象である。汚染事故発生後も中央政府に協力するという地方政府の姿勢は見られず、最後まで地方政府の利害を追求し、独自の立場を押し通そうとする地方政府のスタンスをかいま見ることができる。今回の汚染事故は、膨大な利権を持つ地方官僚が市民の基本的利益を重視することができるのかという問題を改めて提起しており、現状における中国の政治改革の困難さを示していると言うことができよう。
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