【大紀元日本8月2日】(東京=月川真理)台湾陳水扁総統は7月26日、総統府と日本外国特派員協会が開催した国際テレビ会議で、アジア太平洋の安全と平和を推進し、アジアの民主主義を発展させることについて講演を発表した。陳総統は、第二次世界大戦終結六十周年にあたり、平和と民主主義への強調の同時に、中共を「非平和的な勢力の台頭」であるとし、中国の軍事的野心と軍備力の拡大は、台湾海峡及び世界の民主と平和への脅威であるとの懸念を示した。また、平和的な「台湾海峡の新しいパワーバランス」と、これに立脚した民主・台湾への支持を積極的に求めている。
胡錦濤との面会に関する質問に、陳総統は北京の統一戦線にノーと表明、中南海の指導者との面会は重点ではなく、両陣営が民主的かつ対等に平和的なアプローチを重ねて協議するよう求めている。大陸の民衆に「中共は中国の13億の民衆を代表できない、台湾の民主と自由は大陸にとって格好の参考であり良い手本で、中国の民衆が中国の政治に影響を与えよう」と呼びかけた。
日本との関係について、世界健康大会や愛知万博でビザの優遇措置など日本からの支持に謝意を表明し、「日本は台湾にとって最も良い友人。台湾と日本とは、最も良い価値のある、経済的かつ民主的で安全な同盟である。両国の関係が更にいっそう親密になることを期待している」と強調。また29日から予定している第15次日華漁業交渉について、有効な結果を収めることを希望しているとし、問題の複雑さから短期間内に解決できない可能性も指摘。最後に、日本の民衆に、中共を恐れないようと呼びかけた。
北京が武力を用いたがる要因:政策決定が不透明、政治が非民主、社会に不確定な要素
陳総統は、演説の中で中共の「非平和的な勢力の台頭」について指摘し、アジア太平洋地域において民主主義を固める上での挑戦であるとした。
「米国防総省が19日に発表した『2005年中華人民共和国の軍事態勢報告』では、中共が重要な転換点にあることを明らかにしている。中共の軍事予算は年々二ケタ台で増加しており、650発から730発の弾道弾を配置して台湾に照準を合わせている。このため両陣営の軍事バランスは北京に傾いている」。
陳総統はさらに強調して、「中共が3月に一方的に可決した『反国家分裂法』は、まさに『非平和的なやり方』で公然と台湾海峡の問題を処理しようとするものであり、国際社会がもっとも恐れているのが、中共が戦略弾道弾部隊の改編を進め、核兵器による威嚇反撃能力を備えて既にインド、ロシア、米国、オーストラリア、ニュージーランドを射程内に収めていることだ。中共は最近になって、もし台湾海峡で紛争が起こったら米国に対し核兵器の使用も辞さないとの発言をしたが、これは中共の軍部が情勢を誤って判断するかもしれないという危機もはらんでいる」。
また、「外からの脅威がない状況下では、北京当局はあいも変わらずに軍備を拡充し、ミサイルを増やして配備し打撃能力を強化している。これについては、全世界の民主と平和を愛する国々から北京政府に対して共同の疑問が提出されている」とし、「政策決定が不透明で、政治が非民主的で、社会に不確実な要素が充満していることが、北京当局が兵力にこだわり武力を用いたがる主要な原因となっている」と述べた。
三つの目標:台湾の民主を確保、中国の民主発展を支援、国際社会の支持を呼びかける
陳総統は「中国が全地球規模での『民主的グループ』にあって正統的な力になるためには、『中国の台頭』には『平和への覚醒』と『民主的な発展』が伴っていなければならない。台湾はここ数年、民主主義を強固なものとし、これを深める努力が実を結んでおり、中国にとっての灯台となっています」と述べ、台湾海峡の新しいパワーバランスとして次のように三点をあげた。「中国の軍事的脅威に対しては、台湾政府は依然として『台湾の民主と両陣営の平和』に基づく、台湾海峡の新しいパワーバランスへの支持を積極的に求めている。新しいパワーバランスには三つの目標がある。第一は、台湾の民主を確保しつつ、中国の非平和的な脅威を受けないこと。第二は、全世界の民主主義の国々が連携を図り、中国の民主発展に協力すること。第三は、両陣営が平和的に交互に構築しあう対話を求め、関係を正常化し、アジア太平洋地区の平穏を保証することである」。
陳総統は、さらに「台湾は国際社会に中国を引き入れて国際的な平和の枠組みの中で進展させようという過程にあって、建設的に協力する役目を果たそうとしている。しかしながら、目下、民主・台湾は、中共の『非平和的で、非民主的な』脅威に晒されているため、国際社会が正義をもって台湾を支持することを希望している」と呼びかけた。
13億の大陸民衆が中南海に影響を与えることを希望
「九評共産党(共産党についての九つの論評)」が脱党を誘発し中共が平和的に解体する可能性があるかという見方については、陳水扁氏は「『九評共産党』については、注意もしていますし聞き及んでもいるが、これは別の一つの視点である。観察するのもいいし、予言するのもいいが、中共の進退については、徹底的な崩壊か、もしくは台頭かのどちらかである。さまざまな意見があると思う」と答えた。
続けて「私が最も関心があるのは、中国大陸の13億の民衆が結局のところどのように考えているかだ。民衆の考えが、中南海や北京当局と一致しているはずがあるだろうか?広大な中国大陸の民衆の台湾に対する態度は、北京当局の少数の指導層であるエリートたちと完全に一致しているはずがあるだろうか」と疑問を投げかけ、「中南海の一握りの指導者が台湾に対して敵意を持っているとしても、13億の大陸民衆が台湾に対して何らかの敵意を持っているとは信じられない。大陸の民衆が胡錦涛総書記に影響を与え、中南海の一握りの指導層エリートに影響を与えることを希望する。なぜなら、胡錦涛総書記と中南海の指導層が13億の中国大陸民衆を代表しているとは思えないからだ」と述べた。
「中国大陸では、だれもが新聞の自由、言論の自由、思想信条の自由を渇望しているが、どうして台湾にはそのような問題がないのに大陸にはあるのかということが考えられないことがあるだろうか。台湾には民主的な選挙があり、国家の指導者はガラス張りの投票によって選ばれる。中国大陸では短期間の内に民主的な選挙を行うことが可能だろうか。政権が移行することが可能だろうか」。
「中国大陸では、政党が一切を凌駕しており、人々は洗脳されている。党は政府を代表し、政府を凌駕しており、政府の公権力に取って代わる。これは民主社会の人々にとって想像できないことである。台湾では、政府は政府であり、政党は民間の団体であり、政党が政府の公権力に取って変わることはない」。
「台湾は小さいですが、台湾人のためにしてきたことが繁栄につながり、台湾の民主と自由を深めたというサクセス・ストーリーは、中国大陸の13億の民衆にとって良い参考となる、格好の手本となるはずだ」。
胡錦涛総書記が連・宋と会談したのは、統一戦線によって台湾を分断するもの
その他、陳水扁総統は両陣営の経済関係や、両陣営の対談について記者が提起した質問に答えた。
胡錦涛総書記と会談することについて、陳水扁総統は「台湾が求めているものは、善意によって打ち解けあい、積極的に提携し、両陣営の関係を恒久的に平和なものとすることである。民主、対等、平和の原則の下、中国大陸にアプローチを重ねるのが協議の正道であって、指導者らが会うのは重点なことではない」。
彼はまた、「今年の四月から五月の間に、国民党の連戦・主席と、親民党の宋楚瑜・主席が中国にまで行って、胡錦涛総書記と会談をした。多少の共同認識、結論があったにせよ、最も重要な点は『台湾政府と話がしたい』という一点であり、政府が権力を授けられているか委託されていなければ、どのような政党、農民協会のような民間団体でさえ、政府の公権力を取って変わることはない」と指摘した。さらに「私たちは非常に明確に分かっている。胡錦涛総書記は本当に台湾政府と対話がしたいのではない。連・宋の両氏と会談したのも完全に統一戦線から出たもので、台湾を分裂させる狙い。両陣営の協議を重ねて開くという本来の正道ではない」。
また、「11月に韓国の釜山でアジア太平洋経済会議(APEC)が開かれ、非公式だが、指導者どうしが会う首脳会談だったのです。実際、それは良い機会だったのですが、中共が再び阻むことをしなかったならば、双方の指導者は自然と面会することができた。しかし、中共に誠意がない状況下では、このような期待は容易に実現しない」。彼は同時に、「勝ち取るためには、時間を引き延ばすこともいいとは言えない。可能であればどのようなことでもあきらめず、継続的に努力し勝ち取っていく」。
大陸との経済関係については、「有効な管理がまず先にあり、後に積極的に開放する。経済の安全がなければ、国家の安全はありえない。台湾がなければ、台湾系企業もあり得ない 経済の安全は国家の安全の中で最も重要な一つです。このため中国への輸出については、完全に規制を設けないというわけにはいかない。ビジネスには原則がつきもので、商人が商いを言うというような、何をやってもいいというわけではない。どうして欧州連合(EU)の武器輸出解禁が国際的な関心を引き起こすのだろうか。台湾について言えば、極めて多くのものの輸出に規制が設けられていないが、しかしながらあるものについては規制している。これは特別に高級技術の分野に及んでいます」。
日本と日本人に対する期待
最後の質問、日本との関係について陳総統が強調したのは、「日本は台湾にとって最も良い友人。台湾と日本とは、最も良い価値のある、経済的かつ民主的で安全な同盟の道筋。両国の関係が更にいっそう密接になることを期待しています」と陳総統は述べた。
世界の健康大会で日本が台湾を支持したこと、愛知万博で台湾の観光客にビザ等の優遇措置をしてくれたことに感謝を表明し、ビザ免除の措置が恒常化するよう希望した。彼はまた、米国と日本が中国の「反国家分裂法」に強い関心を持ち、更に日本が米国と力を合わせて欧州連合の中国への武器輸出解禁に反対したことについて謝意を表明した。
29日から予定している第15次日華漁業交渉については、彼はこの会議が有効な結果を収め、これまでの異なった見解が解決することを切に希望している。しかし同時に指摘したことに、漁業問題には、干渉、漁業権、及び主権の問題があるため、デリケートで複雑であり、短期間の内に解決するか、或いは一同が満足することはないとしている。最後に、中共を恐れる必要はないと日本人に呼びかけた。
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